法学部の学び 少人数教育のゼミから 家族法史

身近な法律である家族法について
法体系成立の過程と現代の課題を考察する

宮北 桃子 さん

法律学科4年(2018年度公開時) |
東京都立富士高等学校 出身

ゼミ(演習)では、3年次前期に家族法の判例を研究し、現代の家族が直面する問題を考察。後期は、日本とフランスにおける家族のあり方の変遷を比較し、併せて日本の家族法に関しては現行法が成立する過程を学びました。法体系成立の過程を踏まえることで今日における家族法の背景を理解するとともに、課題を明確化できました。現在議論されている夫婦別姓について、民法に記されているのは夫婦の姓を同一にするという規定のみです。しかし妻が夫の姓を名乗るケースが多いのは、かつてこの国の根幹にあった家父長制の名残、つまり法ではなく、慣習であると言えます。法律を学び社会的な事象を論理的に考えるようになり、当たり前と捉えていた事柄でも根拠が希薄と思えるものについては、改めて考察したいという意欲が強まりました。旧慣が根強く社会に残る一方で、家族に関わる新たな課題に法制度が追い付いていないケースもあります。そのひとつが、体外受精などの医療技術による不妊治療を指す生殖補助医療です。家族をつくるための問題として興味を持ち、ゼミと並行し「LE(Legal Expert)選抜コース」の卒業論文でこの問題を取り上げました。欧米諸国では厳格な法を定めて行われていますが、日本では法体系が確立しておらず、先生の指導を受けて海外の状況と比較し、自分の考えをまとめました。

教員メッセージ

高橋 朋子 教授

夫婦や親子などについて定める家族法は、学生にも身近な法律です。しかし、家族法をよく理解するためには、家族法の歴史を知り、また、外国法との比較をすることが重要です。ゼミでは、日本とフランスの家族法史に関する論文を読み、学生同士で議論を行います。議論の場では必ず発言することをルールとしています。誰にでも関係する法律ですので、多数の意見が出て、ややもすると議論が感情や思い込みに流れることもあります。そのような場合には、私から事実の確認をするなど、交通整理を行うことがあります。ゼミにおける議論では、客観的な事実や社会に内在する価値観を正確に認識すること、また、他の学生の意見を理解し受けとめることが重要になります。自分の家族観を見つめ直す場になることを願っています。

法学部教授。1985年、東京大学大学院法学政治学研究科(博士課程)修了。専門分野は民法(家族法)。2013年から現職。学界活動では、日本私法学会理事など。著書に『近代家族団体論の形成と展開』など。