法学部の学び 法学事例紹介
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「地球温暖化」は現代世界が直面するもっとも大きな問題のひとつだ。
この問題は、普通、人間の経済活動がもたらした自然環境の変化の問題として理解されている。しかし、実際には、世界各地の国や企業、市民組織などの多様な思惑が入り乱れる、国際政治経済問題としての性格が強くなりつつある。
温暖化ガス→気温上昇→気候変動→環境リスクの高まり
世界中の科学者たちが集まって、地球の大気に関する多様なデータを分析した結果、地球の平均気温が上昇しつつあることが確認された。その主要な原因は、産業革命以来、人間が排出してきた二酸化炭素などの「温暖化ガス」にあると考えられている。
「温暖化ガス」の作用で地表面の温度が上昇すると、各地の氷河や南極と北極の氷が縮小する。特に、地上の氷が溶け出すことが、海水面の上昇をもたらしている。また、極地の氷の縮小は、海流に大規模な変化を引き起こす可能性をもっている。そうなると各地の気温の変動幅が大きくなる。例えば、大規模な干ばつが起こったり、台風の数や規模が大きくなったりする。
こうした“異常気象”は、従来の予測の範囲を超えたリスクをもたらすことになる。
つまり、地球全体が大規模な気候の変化というリスクにさらされることになる。
海面が上昇したらなくなっちゃう国だってあるし、世界の主要な都市もかなり沈んでしまうらしいよ。
みんなが真剣に考えて、二酸化炭素の排出量を減らさなければ大変なことになるよ。
でも陸地が全部なくなるわけでもないし、いざとなったら堤防を強くしたり、高いところに引っ越したりすればいいんだよ。ともかく、エアコンのない生活なんていうのはもう考えられないね。
そんなのんきな話をしている場合じゃないんだよね。「地球温暖化」の被害は、人類全体に及ぶんだから、みんなが身勝手なことを言っていたんじゃだめなんだ。
先進国も途上国も、みんなが協力して取り組まなければいけないんだよ。
だけど日本みたいな先進国は今の豊かな生活を維持したいし、インドや中国のような発展途上国は、温暖化の責任は先進国にあるといって、ますます大量の温暖化ガスをまき散らしているよ。だから、身勝手なのは、私だけじゃないんだよね。
でも先進国は「京都議定書」で二酸化炭素の排出量を削減することを約束しているし、ヨーロッパの国々ではエコロジー意識が生活のすみずみにまでおよんでいて、代替エネルギーの利用にも積極的だよ。
ともかく、先進国が率先して「温暖化ガス」の排出量を減らして、途上国にも積極的に援助をしていくくらいのつもりでやらなきゃだめなんだ。
熱心なのはヨーロッパの中でも豊かな一部の国だけだよ。もう京都議定書の基準は守れないって宣言してしまっている国もあるし。
日本だって、温暖化が大変だっていろいろ言っている割に、具体的にはたいした努力もしていない。むしろ、経済をよくすることの方が大事だっていう姿勢だよね。
どちらも間違っていないけど、これは国際協力ができるといいなという理想と、各国が自己利益を勝手に追求しているという現実の間の対立という単純な話しでもないんだよ。
生活水準を維持したり良くしたりするためには、やっぱりエネルギーが必要だよね。
エネルギーを獲ること自体をあきらめて生活水準を落とすことに取り組んでいる国はないんだよね。
今、利用可能なエネルギー源としてもっとも効率がよいのはやっぱり石油。でも新しい油田の発見はどんどん難しくなっているから、もうあちこちで石油の取り合いが始まっている。
他方で、代替エネルギーの開発にとても熱心に取り組んでいる国があるよね。
二酸化炭素の排出量を抑えないと温暖化は確実に進行するから、国は国、企業は企業、個人は個人のレベルでそれぞれに努力をしなければいけない。
そういった意識が浸透し、具体的な対応策を打ち出しているのはヨーロッパの国々だ。
でもね、代替エネルギーの開発に成功すると、とても大きなもうけになるわけだね。
だから、代替エネルギー開発は、地球温暖化を防ぐという理想と大きなビジネス・チャンスという2つの側面があるんだよ。
だからね、国だって会社だって、地球全体のことなんかよりも、自分の利益を中心に行動しているっていうことだよ。
いやいや、ビジネスという現実と地球全体の利益に貢献するという理想がうまく両立する可能性があるっていうことだよ。
そういう風に単純に考えないこと!
例えば、代替エネルギーの開発だといって進められていることの中には、必ずしも良くない結果をもたらしていることもある。
原子力発電が本当に代替エネルギーなのかどうかは議論のあるところだけど、植物から燃料を作り出そうという試みは、穀物の値段をつり上げたり、食用穀物の生産の滞りをもたらしたりしているよ。
難しい…
そうでもないさ。大事なのは問題を多様な観点から検討してみることだね。
まずは、地球環境問題とエネルギー源をめぐる競争は深く関係しているということを確認しよう。そして、この競争は放っておくと、地球規模の協力どころか、大規模な対立や戦争をもたらすくらい深刻なものになる可能性だってある。
他方で、みんなが身勝手に行動すると、結局自分の利益も実現しない。だからこそ、きちんと協力する仕組みを作り出さなければいけない。それは難しいけれど、できなければ、結局はみんなが共倒れになってしまう。
だから、深刻な対立があるという現実をふまえて、協力を可能性を探っていくという姿勢が大切だね。
なるほど。私たちは、お互いのいうことをよく聞く必要があるということだね。
もうひとつ大切なのは、気象変動がもたらすリスクは結局避けられないということを確認することだね。
ただ、リスクは、実はみんなにとって同じだけ高まるわけではなくて、どちらかというとこれまでも弱い立場にある人の方が、より大きな危険にさらされることになる。
だからといって、強い立場にある人や国が、それは他人の問題だといっていると、数の上で圧倒的多数にある弱い立場の人々や国々が、黙っているとは思えないよね。
だから、「地球温暖化」はただの環境問題じゃなくて、社会の中で費用やリスクをどのように分かち合うのかという政治的な問題なんだ。
この点をふまえて、もっと深く考えてみるといいね。
「地球温暖化」はただの環境問題じゃなくて、深く政治に関わる問題!