学びの蹊
経済学部
FACULTY OF ECONOMICS
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ゲーム理論と囚人のジレンマ
経済学部
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ゲーム理論と囚人のジレンマ
現代経済学を理解するために必須となっているゲーム理論。「囚人のジレンマ」は、ゲーム理論におけるモデルのひとつです。今回はプレイヤーである囚人たちの思考を、利得表という表を用いながら実際に辿ることで、「囚人のジレンマ」の仕組みを学んでみましょう。これから学ぶ内容は、競争社会と言われる今日を生きるあなたにとって、きっと役立つものになるはずです。
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ABOUT STUDY
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さぁ、もしあなたが囚人Sだった場合、どのような選択をするでしょうか?仲間である囚人Tのために黙秘するか、はたまた裏切って自白するか…。ここで動画を止めて、少しの間考えてみてください。
いかがだったでしょうか。囚人SとTの思考を表にして、仲間の選択に対してどのような選択を取るべきか見てみましょう。
・囚人Tが黙秘すると仮定した場合、SはTと同じく黙秘するよりも自分だけ自白した方が刑期は短くなるので、自白をした方が良さそうです。
・囚人Tが自白すると仮定した場合、Sは自分だけが黙秘をすると自分の刑期が長くなってしまうので、やはり自白をした方が良さそうです。
したがって、囚人Tが何をしようが囚人Sにとっては黙秘より「自白」をする方が刑期が短くなるので、囚人Sは自白をすべきです。これは囚人Tの立場に立っても同じことが言えるので結局2人は「自白」を選択することになります。
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囚人2人の思考や決断をゲーム理論に基づいて整理してみましょう。
この状況は、ゲーム理論において、次のように説明できます。ゲームの「プレイヤー」は2人の囚人SとT、各プレイヤーが選ぶことができる「戦略」は「黙秘」と「自白」の2つ、プレイヤーの「利得」、つまり得点は刑期の短さを意味しますこのゲームにおいて、各プレイヤーは、自分の2つの戦略「黙秘」と「自白」を比べ、他のプレイヤーがどちらの戦略を選ぼうが、「自白」という戦略が自分の利得を大きくすることに気が付きました。ゲーム理論では、このような戦略を「強支配戦略」と呼びます。
強支配戦略とは、プレイヤーが「個人としての合理性」を最大限に追求した行動方法と言えます。
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この状況は、ゲーム理論で「囚人のジレンマ」として知られています。
この囚人のジレンマとまったく同じ構造を持つゲームが、企業間の価格競争です。先ほどと同様に表、ゲーム理論の用語で「利得表」と言いますが、これを見ながら考えていきましょう。ゲームのプレイヤーは似たような製品を販売していて、ライバル関係にあるA社とB社、各プレイヤーが選ぶ戦略は販売価格を「高価格」とするか「低価格」とするかです。また、各プレイヤーの利得は利潤を表します。A社とB社の価格が違うとき、低価格で販売する企業には需要が集中して莫大な利益をもたらす一方、高価格で販売する企業は製品が売れずに損失を被る、という特徴が利得表に反映されています。
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この価格競争のゲームにおいては、「低価格」が各社にとっての強支配戦略になります。このことをA社の視点から説明しましょう。
まず、ライバルのB社が「高価格」を付けるなら、A社は「高価格」よりも「低価格」を付ける方が利潤を大きくできます。また、B社が「低価格」を付ける場合も、A社は「高価格」よりも「低価格」を付ける方が利潤を大きくできます。よって、A社にとって「低価格」は強支配戦略です。同じように、B社にとっても「低価格」は強支配戦略です。
ところが、2社がともに「個人としての合理性」を追求して強支配戦略である「低価格」戦略を選択すると、両社が揃って高価格戦略を選択した状態よりも各社の利潤は下がってしまいます。なぜならば、顧客シェアは何も変わらず、価格だけが下がるからです。ここでは、両者が揃って「高価格」戦略を選ぶ状態が「全体としての合理性」なのですが、その状態は各社の「個人としての合理性」からは実現されません。
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「競争社会」とも呼ばれる現代社会には、企業間の「価格競争」の他にもさまざまな競争が存在します。そこで、競争の結末を予想したり、競争の構造を分析したりすることを目的に、20世紀中ごろにゲーム理論が誕生しました。
成蹊大学で「ゲーム理論」を担当する吉田 由寛教授はこう語ります。「自由と競争は、コインの表と裏の関係にある。人々が自由に行動できる社会では、人々の利害は衝突し、必然的に競争が発生するからである。したがって、自由な社会について知るためには、競争について知る必要があり、それにはゲーム理論が役に立つ」
ゲーム理論は、今や経済現象に留まらず、現代社会のさまざまな現象を理解する上で必須の学問になっています。
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いかがだったでしょうか。ゲーム理論も「囚人のジレンマ」も実社会で活用できるものです。また、何よりもそれらの学問の考え方を吸収することで、物事の本質を見抜く確かな洞察力が身につくでしょう。「自分には難しいかも…」と思っても、心配することはありません。成蹊大学には、一緒に考え、あなたの学びをサポートしてくれる教員がたくさんいます。学問自体を楽しんで、学問的な発見・気付きの感動をたくさん経験してください。
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成蹊大学経済学部にはご紹介した学びの他にもさまざまなテーマに取り組む少人数のゼミがあり、教員と学生が近い距離の中で日々の学びに取り組んでいます。