学問をひもとく PICK UP! 研究

学問をひもとく PICK UP! 研究

井上 智夫 教授

世の中の「不確実なこと」を予測する

データ分析を通して見えてくる未来の姿とは?
金融政策の影響から店の売り上げまで、今「予測する力」が求められています。

多くの分野に応用できる「計量分析」

日本銀行などが行う金融政策の効果を、統計的な手法で解明するのが、現在私が取り組んでいるおもな研究です。それらの金融政策は日本の物価や株価などに対して、効果があったのか、あるいはなかったのか、これらはさまざまなデータを数学的に分析することで見えてきます。この時に使う「計量分析」という手法は、金融だけでなく政治や経営など多くの分野に応用できるもの。例えば、トランプ大統領の貿易政策は世界経済にどんな影響を与えるのか、といったことから小売店の売り上げ予測まで、解明が可能になります。政策でも経営でも、何かを行う時に前もって結果を予測できれば、目標を達成する上で大いに役立つことでしょう。データを数学的に分析する力は、世の中にたくさんある不確実なことを予測する力でもあるのです。

フィリピンの最高裁判所判事のネットワーク
(最高裁判所判事の行動を分析した実証研究より)

身近な商業施設でデータ分析の魅力を体感

計量分析を身近に感じられる例として、ゼミでは、商業施設「アトレ吉祥寺」の日々の売り上げ金額や来客者数などのデータを分析しました。曜日や天候による来客者数や売り上げの違いなどを予測できれば、お店側としても余分な仕入れをしなくて済む、つまり売れ残りを防ぐことができます。アトレ営業担当者の方との意見交換会もあるので、数字とにらめっこするだけではない「分析の魅力」を体感できるでしょう。お店の経営に実際に役立っているという実感も励みになって、データ分析の手法が着実に身につきます。データを分析し予測する力は、先が見えにくい今の時代にこそ求められるもの。世の中の複雑なシステムがこの先どうなるのか「予測」してみたい人に、おすすめの学問ですね。

井上 智夫 教授

東北大学経済学部卒。学部生の時、留学先のカリフォルニア大学で経済予測・分析の第一人者から学び、その分野への関心を深める。就職先の民間企業で分析力の必要性を痛感し、同大学大学院へ進学して博士号を取得。

研究分野
実証マクロ経済学、時系列分析、パネルデータ分析