学問をひもとく PICK UP! 研究

学問をひもとく PICK UP! 研究

小田 宏信 教授

地図と足を使って考える、空間と経済社会

経済と地理ってどんな関係があるの?
歩いて、目で見て、生の声を聞いて地域のことを知り、未来への方策を考えます。

経済と地理は密接に関係している

みなさんには「経済地理」という言葉はあまり馴染みがないかもしれません。実は経済活動を考えるにあたって、地理的、空間的なセンスは不可欠なのです。たとえば、ものづくりの会社であれば、生産効率を上げるには関連加工業も含めて近場にまとまっているのが良いわけですが、一方で、そうした地理的集中がかえって非効率やリスクをもたらす場合もあります。グローバル企業なら、世界のどこに工場を置いたらいいのか、進出先に合わせてどのような戦略を講じたら良いのか、やはり地理感覚が必要になります。そしてこうした企業の立地行動が地域経済や地域間の経済格差に影響を与えていくことになります。地理と経済を一緒に考えることによって、立体的に現代の経済社会をとらえていく力が養われます。

人と人の繋がりで育まれる地域経済

生産ネットワークが国境を越えて広がっている現代の状況が、各地の地域経済にどのような影響を及ぼしているのか。現地に出かけてその実態を把握すると同時に、持続可能な地域づくりのため方策を考えることが、私のテーマです。徳島県では、IT企業などのサテライトオフィスを積極的に誘致しているのですが、企業は協働して、進出地域と繋がって地域の力を引き出すためにさまざまな取り組みをしている。グローバル化、情報化などと言われる時代にあって、ローカルな空間での人と人との繋がりこそが、経済的持続性を引き出す源になってきているのです。
ゼミでもフィールドワークを重視し、できる限り地理的な特性や、現地の人の生の声に触れてもらうよう心がけています。自分で歩いて、人と話して、消費者や企業の目線だけではなく、市民・公共の目線も持って、社会の持続的発展を考えられるようになってほしいと思います。

島根県津和野町でのインタビュー調査

小田 宏信 教授

立命館大学文学部卒業、筑波大学大学院博士課程地球科学研究科単位取得。博士(理学)。専門地域調査士。旅行を通して各地域の個性に興味を持ち、地理学を志す。学生時代に瀬戸内海の島で経済と地域での暮らしの関係を体感し、現在の専門への指向を確固たるものにした。

研究分野
経済地理学、地域経済論、産業集積論、地域産業政策