理工学部の学び 少人数教育の研究室から 生体分子化学研究室

佐藤 宏樹 さん

大学院 理工学研究科 理工学専攻
物質生命コース1年(2018年度公開時)|
神奈川県立平塚江南高等学校 出身

研究室では、生命の源であるタンパク質の品質管理を担う糖鎖の働きを、化学的な手法を用いて分子レベルで明らかにしています。タンパク質は、細胞内で正常な形に折り畳まれることで、初めて生命活動に関わる機能を発現します。その際、糖鎖がタンパク質の折り畳みを補助する働きをしますが、糖鎖が働いても正常な形にならなかったタンパク質は細胞内に溜まると病気を引き起こすため、不良なタンパク質は分解され細胞外に排出されます。その分解の仕組みに関わる酵素を、戸谷先生が発見しました。しかし、酵素の詳細な機能は不明のままでした。そこで私は、酵素の働きを人工的に抑えたり促進したりすることで、不良タンパク質の分解における酵素の役割を解明することを卒業研究としました。研究は、酵素の働きを抑制する物質の合成から着手しました。フラスコ内で起きている分子の動きをイメージして実験を試行錯誤し、合成に成功。その物質を用いて不良タンパク質の分解を抑制する段階に研究を進めました。ここで一定の結果を得られれば、次に酵素の働きを促進する物質をつくってタンパク質の分解を確かめ、さらに抑制と促進の結果を比較します。研究は長期間を要するものですが、生命現象の真実に一歩ずつ近づいていることを実感しながら、大学院で研究を継続しています。

教員メッセージ

戸谷 希一郎 教授

化合物を用いて生命現象を解明する研究室です。対象は生物学の世界ですが、研究の軸足は化学に据えています。化学の研究で重要なことは、肉眼では見えない分子や原子の動き、論文に書かれた内容を、頭の中でアニメーション化する想像力だと考えています。化学現象を映像として思い浮かべられれば、実験に失敗しても別の手法を描きやすくなります。研究室にホワイトボードを設置しているのは、実験で分かった現象や自分の考えを言葉として表すだけでなく、図式化することを促すためです。異なるテーマに取り組んでいても図式は理解しやすいものです。他者の意見を取り込み自分の研究を進めることも重要と考えており、また自分の専門を通して仲間の研究を手助けすることも、研究室の方針としています。

理工学部教授。専門分野はケミカルバイオロジー、糖鎖生物学。慶應義塾大学大学院博士後期課程修了。理化学研究所、科学技術振興機構を経て、2008年に成蹊大学理工学部専任講師に就く。2018年から現職。