理工学部の学び 少人数教育の研究室から ソフトウエア研究室

高速化、省エネ化、高信頼化を
ソフトウエアの力で達成する

赤津 大河 さん

情報科学科 2018年3月卒業 |
長野県松本県ヶ丘高等学校 出身

コンピュータの計算処理にかかる負荷をソフトウエアにより軽減し、省エネルギー性を向上させるとともに、処理速度の高速化を図るのが並列処理と分散処理。ひとつの命令(タスク)を複数のプロセッサーで処理する並列処理と、複数のコンピュータをネットワークでつなぎ同時並行で計算を実行させる分散処理は、高度に進歩した処理能力が頭打ちとなった現状において強く求められているプログラミングの技術です。複数の処理を計算とその確認に振り分けることができれば、省エネ化と高速化だけでなく、処理結果の信頼性も高まります。私は、一般的なプログラムを、並列プログラムに自動変換する技術の開発に取り組みました。完全な自動並列化を達成したプログラムはいまだ存在せず、難易度の高さから、これほどプログラミングに集中したことや、周囲に研究のヒントを求めた経験はありませんでした。スマートフォンですら並列処理の機構を持っていながら、並列プログラムを書ける技術者は少なく、複雑な構造のためエラーが多いのが実態です。従来のプログラムを自動で並列化できれば、開発現場の課題は解決され状況は一変します。今はその過渡期にあり、社会的な影響力が高い技術を開発していることを実感しながら、卒業研究に取り組むことができました。

教員メッセージ

甲斐 宗徳 教授

研究室に入るまでの授業で学生は、間違いに対して具体的な指摘を受けながらプログラミングを覚えます。一方、研究室では目標が提示され、それを実現するプログラムやアルゴリズムは学生自身で考えます。学生はここで、本当の意味での開発に取り組むことになり、その経験が自主性を養います。技術開発に自分から取り組むようになると課題発見力も高まり、モバイルエージェント関連の研究は、学生の提案で研究室のテーマに加えました。また、計算処理の高速化や省エネ化という目標を共有する学生同士は議論も活発化し、協調性も育まれます。こうして問題解決に対する自主性と協調性を備えることで、周囲とコミュニケーションを取りながら仕事を進め、頼りにされるソフトウエア技術者になってほしいと考えています。

早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了。専門分野は並列・分散処理ソフトウェア。1988年、成蹊大学工学部経営工学科助手に就き、同専任講師、同大学理工学部情報科学科助教授等を経て、2005年から現職。