文学部の学び 少人数教育のゼミから 日本語の歴史的研究と
現代の形態

日本語の変化や使われ方を、
数多くの用例から実証的に研究する

伊仲 未楓 さん

日本文学科 2018年3月卒業 |
埼玉県立浦和西高等学校 出身

ゼミ(演習)では、日本語の歴史的な変遷や現代での使われ方を追究しています。普段使っている日本語を改めて研究してみると、興味深い発見が数多くありました。日本語学では、「正しい日本語」という決めつけをあまりしません。一般に「乱れた日本語」とされる「ら抜き表現」も、時代の流れによる必然の形態と捉えて変化の背景を探ります。批判をするのではなく、実例を集めて根拠を考える研究手法も日本語研究に惹かれた理由のひとつです。そうした日本語研究の進め方を学んだ上で、私は「赤の他人」「腹黒い」など、本来の色とは別の意味で使われるようになった点をはじめとして色彩語の用法を卒業論文のテーマとしました。「青二才」「青侍」などの「青」が、未熟さなど共通する意味を持つ点や、色から派生するイメージを分類した研究はすでにありました。しかし、いつどのようにして色彩とは異なる意味が派生したか、なぜそのような意味を持ったかなどを明らかにした研究はほとんどなく、時代をさかのぼり過去の文献からその源流を探しました。ゼミの仲間の個人研究もそれぞれ個性的ですが、同じ日本語を扱っているため参考になる点も多く、様々な意見を取り込み卒業論文を書き上げました。

教員メッセージ

久保田 篤 教授

日本語の文字、文法、敬語などの歴史的な変化と、現代語の実態を研究しています。書物や新聞をはじめ、ポスターやチラシ、車内広告や看板など日本語が記されているあらゆるものを対象とします。ある時代に、実際に使われた日本語の実例数が多いほど、実証研究としての精度が高まるからです。大切なことは、普段使っている日本語に対して常に注意を向けること。学生の研究テーマは、中世・近世の感謝表現、武家言葉、百貨店広告、和菓子の名前、アイドルソングの歌詞など、時代、対象とも様々で、どれにも学生の興味が反映されています。そうした独自の視点を生かしつつ、学問として通用する卒業論文にします。論文作成や発表を通して、人に伝わりやすい日本語を使いこなせるようになることも、ゼミの重要な目的のひとつです。

文学部教授。専門分野は日本語学。日本語の文字・表記、江戸時代語を研究する。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学文学部助手、茨城大学人文学部助教授を経て、現職。