現代社会学科の学び

街に出る

卒業論文の事例から:執筆者インタビュー

渋谷でハロウィーンをフィールドワーク

ー見せるための舞台から共有の場へ

小島悠理さん

-小島さんは渋谷でのフィールドワークをもとに、『なぜハロウィーンに仮装して渋谷に行くのか』という卒業論文を執筆されましたが、そのきっかけは何だったのでしょう?
高校時代の友だちとハロウィーンの日に仮装して街に出てみたことです。最初六本木に行ったら、混雑して身動きが取れないほどでした。そこで新宿に移ったところ、今度は誰も仮装していなくて浮いてしまいました。なぜ街によってこんなに盛り上がり方が違うのだろうと疑問に思い、人が集まることで有名な渋谷でフィールドワークをすることにしました。
-なぜ多くの人がハロウィーンに渋谷に集まるのでしょう?
ハロウィーンが「仮装して集まり、騒ぐ」という非日常的体験の場であることが大きいと思います。日常生活の中で漠然とした不安を抱くことの多い現代社会だからこそ、異空間と化す渋谷に惹かれるのでしょう。
-なぜ渋谷なのですか?
1980年代から、渋谷は他人に自分を見せる「舞台」としての意味をもってきました。ハロウィーンも仮装した自分を他人に見せるイベントです。ただし、調査をしてみるとハロウィーンでは「見せる人」と「見る人」の区別がとても曖昧であることがわかりました。ハロウィーンに集まる人にとって、渋谷という舞台で自分を見てもらうことは大事ですが、それ以上に、渋谷がそういった体験を友だちと「共有できる場」であることが重要な意味をもっています。そうした場の延長線上にあるのがSNSなのだと思います。
-SNSなどのメディアとの関係についてはどう思われますか?
SNSは人に見せるものなので、どうしても上っ面の報告になりがちです。一方でテレビなどのメディアは、ネガティブな側面を強調しがちです。どちらのメディアでも、そこで起きていることの一部が切り取られてしまいます。けれども実際にはみんな楽しみながらも、想像以上に秩序だった行動を取っていたり、場所によっていろいろな楽しみ方があったりと、街に出てみてわかったことがたくさんありました。
-フィールドワークの魅力を教えてください。
「こんな場所がある」「こんな人がいる」と自分の目で見て面白く感じたことを、「ではなぜそこでそんなことが行われているのか」と、その背景まで深く掘り下げて考えてみることは、とても楽しい経験です。日常のちょっとした疑問を学問的に深めていけるのが現代社会学科の魅力だと思います。