成蹊教育のモノコト

心力歌・凝念

心力歌(こゝろの力)

創立者中村春二は、その教育の基本的なあり方を、日本古来の教育理念ともいえる「修養」(精神を練磨し、優れた人格を形成することにつとめる)としました。その一手段として、生徒たちに己の心の奥底にある「尊い心」を気づかせるために、中村春二の同志ともいえる小林一郎に依頼して、1913(大正2)年「心力歌」を作成しました。「心力歌」は全8章からなっており、全体に漢文調の音読しやすい工夫がされ、毎日音読することで、徐々に「尊い心」の存在を気づかせるよう導いています。この心力歌は実務学校の生徒に読ませるために書いたものですが、多くの人々にも愛読され、驚くほどの反響を呼びました。また1922(大正11)年には実務学校の英語教師を務めたリチャード・ポンソンビー・フェーンにより英訳され、海外にも紹介されました。

小林一郎 (1876〜1944)
中村春二とは第一高等学校在学中からの親友で、成蹊実務学校創立時に幹事として迎えられ、1916(大正5)年まで実務学校で修身、歴史、英語などの教鞭をとりました。

凝念(ぎょうねん)

凝念は中村春二が、1912(明治45)年4月池袋に成蹊実務学校を創立すると同時に、前身の成蹊園から引き続き導入し、生徒たちに日々行うように指導した精神集中法です。これは岡田式静座法に座禅の一部を取り入れたもので、「凝念」という名称は中村春二が命名しました。その目的はその名のとおり、念を凝らす、つまり精神を集中する行為です。静座(椅子にかけても、立ってもよい)し、手を組み、目をつぶり、呼吸を整え、精神を統一させ、寸分も気を散らさずに集中します。また凝念によって生じる平静にして素直な心の状態を、さらには心の集中・持続する状態を、生徒たちが指導を受け入れるべき「心の門」が開かれると表現し、教科指導の目的は、知識・技能の習得にもあるが、むしろそれらの教科指導を通して精神を統一し、集中・持続する習慣を養うことが重要であるとしました。