帰国後は、成蹊大学の文学部国際文化学科に進学されます。
南米のことをもっと知りたいという気持ちもありましたし、留学で体験した異文化理解を、学問として初歩から系統立てて学んでみようと思ったんです。成蹊大学には、自由にやりたいことを追いかけさせてくれて、教授陣が温かく見守ってくれる環境があると思います。授業以外の時間にはアルバイトを掛け持って、お金が貯まると海外の旅へ。『地球の歩き方』を片手に、バックパックで南米をバスと電車で一周したこともあります。今のようにインターネットですぐに調べられる時代ではなかったので、まさに冒険でしたね。所属していた文化人類学のゼミの綾部真雄先生によるタイの実地調査に連れて行ってもらったこともありました。
自分の研究としては、ボリビアとペ
ルーに多くが居住するインカ帝国の末裔として有名なケチュア族と、山岳民族として知られるアイマラ族という少数民族に着目していました。少数民族と言っても、ケチュア族とアイマラ族を合わせた人口は1000万人以上とも言われています。彼らが出稼ぎなどで都市に移住する過程で、文化や生活様式がどう変容し、迎合していくのかを調べようと思ったのです。具体的には、結婚や葬式、贈与などの儀礼、習慣がどう変わっていくのか。都市に入ると固有の文化は薄まりますが、まったく無くなるのかと思ったら、そうではない。村と都市の文化をミックスした新しい文化を作り出していたんです。