成蹊らしい学びの一つとして行っている動画配信による講演会の第二回目は、本校の卒業生である雅楽師の東儀秀樹さんにご登場いただき「愛する成蹊中高の皆さんへ」というテーマで、成蹊中高生へのメッセージ、雅楽についてのお話や成蹊中学高等学校時代のエピソード、そして素敵な篳篥(ひちりき)の音色を聴かせていただきました。
 最初に「こういうときだから見えてくるもの、感じること、発見することなどを大切にしてほしいという」という力強いメッセージをいただきました。そして、雅楽について。雅楽は神社やお寺、皇室で用いられる音楽で1400年前から行われている日本最古の伝統芸能であるだけでなく、地球上のありとあらゆる音楽と比較しても古く、そして生き続けている。楽器だけでなく楽曲も、昔の形を変えずに現在まで演奏されているのは珍しい。そのような雅楽を日本人が継承し続けているということは、世界の音楽のルーツを日本人が継承し、守っているということにもつながる。とても大きな価値と誇りと責任を感じているというこというお話。そして、笙、篳篥、竜笛など雅楽器を音色と共に紹介していただきました。また、ご自宅に保管されている各国の珍しい民族楽器を様々ご紹介いただきました。民族楽器の中には、日本の雅楽器である笙をルーツをとするものや、琵琶から生まれたと考えられる弦楽器などがあり、どれも興味深い楽器でした。

 そして、成蹊中高時代のエピソードをお話しいただきました。「若いうちにはいろんなことを絞り込まずにいろんなことにチャレンジしてほしい。僕も、成蹊中学高校時代はバンドに夢中だった。高校を卒業してから雅楽の世界に入ったが、遠回りだと思われても、それがその人の個性になることがある」「こんなことをしたら浮いてしまうかも、ということも自分が好きだと言い切れるならそんなことは気にしないでどんどん浮いちゃうといい。それが個性。そういう人じゃないとできない何かを生み出すことができない。そしてその人の作り出した道が後々賞賛されるかもしれない」これらのお話は、日本伝統芸能の殻を破り、新しい雅楽の魅力を発信し続けて下さっている東儀さんならではのお話でした。今後の生き方を考えるきっかけになるようなお話をいただきました。そして、篳篥による演奏「ふるさと」「なんでもないや(RADWIMPS」「キセキ(GReeeeN」最後にはスペシャルゲストとしてご登場いただいたご子息のエレキギターとのセッションで「I was born to love you(Queen)」を披露していただきました。日本伝統芸能である篳篥や笙が現代の音楽と融合することにより、新しい魅力を発揮し、東儀さんらしい個性的な音色になって私たちの胸に響いてきました。緊急事態宣言が発令され、不安や緊張の日々が続きましたが、そんな日々を癒してくれるような美しい演奏に、音楽の力を改めて感じることができました。

 素敵な演奏だけでなく、貴重なお話をいただきました。ありがとうございました。