2023年3月4日(土)学園本館大講堂にて第74回成蹊高等学校卒業式が挙行されました。今年度の卒業生の入学式は、コロナの影響で、中高第二体育館でソーシャルディスタンスを保ちながら行いましたが、3年の月日が経ち、ようやくマスクを外し、晴れて本館大講堂で卒業式を行うことができました。ご来賓の方々にもご列席賜り、保護者の皆様には別会場で動画をご視聴いただきました。

 卒業生代表の答辞をこちらに紹介させていただきます。

 長く厳しい冬の寒さが、暖かい春の日差しにより和らぐ季節となった今日この日、私達は成蹊高等学校を卒業します。本日、新型コロナウィルスの状況下にもかかわらず、このような素晴らしい卒業式を挙行していただいたこと、卒業生一同心より御礼申し上げます。
 三年前、コロナとともに始まった高校生活は、個人としてはそこまで否定的には受けとめていませんでした。普通じゃない入学式、普通じゃない授業、普通じゃない昼食、これらはどれも新鮮で、少し楽しんでさえいる自分がいたことを覚えています。しかし、自分が置かれている状況の本当の意味に気付くまでそう時間はかかりませんでした。一年はあっという間に過ぎ、気が付けばクラスは変わり、あれほど仲が良かった人とすれ違う時少し会話を交わすだけの関係になってしまう。自分は一年生の間に何を学び、経験することが出来たのだろうかと考えずにはいられませんでした。
 しかし、そのもやもやした思いを吹き飛ばしてくれたのが二年生の時の蹊祭でした。普段昼休みを迎えても怖いくらい静寂に包まれていたクラスも、それほど熱くなかった部活も、今までたまっていたエネルギーを爆発させるかのように全力で展示に取り組んでいたことを今でも鮮明に覚えています。コロナウィルスが猛威を振るう中でも蹊祭を開催してくださった先生方、そして、帰りが遅くなっても見守ってくれた保護者の皆様、本当に様々な面で支えてくださり、ありがとうございました。
 この蹊祭を機に、今まであまり関わりがなかった仲間とも関係が深まりました。昼休み他愛もない話をする友人も増えました。放課後、ともにゆっくり帰る親友もできました。それまでのモノトーンであった学校生活に少しずつ彩が加わっていきました。
 それからの一年半はそれまでとは比べようのないほどに密度の濃いものになりました。楽しかったことも苦しかったことも挙げていけばきりがありません。ただ一つ言えることは、この三年間を振り返ると無駄であった時間は少しもないということです。一年生の時の自粛一色だった一年間がなければ、ここまで学校行事に熱を入れようと思うことはなかったでしょう。あの人間関係で悩んだ日々がなければ、ここまで友人を大切に思うことはなかったでしょう。きっとこの先の生活でも無為に時間を過ごしてしまう時があると思います。しかし、数年たって振り返ってみると、その時間は決して無駄ではなかったと思える日が必ず来るという事を私はこの三年間で学ぶことが出来ました。
 本日をもって私達は成蹊高等学校を卒業します。授業中、時に失礼なことをしても常に生徒と向き合ってくださった先生方、どんな辛い思い出も忘れられるほど楽しませてくれた親友達。皆様の支えがあってこそ、振り返るとこの高校生活において、少しも無為な時間がなかったと胸を張って言うことが出来ます。直接はなかなか言えませんでしたが、本当にありがとうございました。そして何より、今まで私たちを育ててくれた保護者の皆様。叱ってくれることが愛情だということにも気づかず、心無い言葉で言い返してしまったことが何度もありました。それでも、常にそばで暖かく寄り添い、支えてくれました。今の僕にはありがとう以上の感謝の言葉は思いつきませんが、心の底から感謝しています。
 私たちの高校生活はマスクで始まり、写真越しでしか仲間たちの満面の笑みを見ることはできませんでした。しかし、今こうしてようやくお互いの表情を直接見ることができました。今日は決して心の底から笑いあうことはできないかもしれません。それでも、またいつか、もう一度集まった時には、全員の満面の笑みが見られることを願っています。
 最後になりましたが、今までお世話になった全ての方々に改めて心から感謝の言葉を申し上げ、答辞とさせていただきます。

 「コロナ禍の中の無為な時間も決して無駄ではなかった」その中でもいろいろなことを学び、充実した高校生活を送った3年間の思いが込められた力強い答辞でした。
 最後にマスクをして3年ぶりの校歌斉唱、吹奏楽部による「3月9日」と「威風堂々」のお祝いの演奏がありました。
 卒業式終了後、生徒会の役員から花束が贈呈され、本館前で保護者の皆様と記念撮影を行いました。在校生も部活動でお世話になった先輩方のご卒業を祝うために本館前に集まり、門出を祝福していました。卒業生の晴れ晴れとした笑顔が印象的な卒業式となりました。

 卒業生の324名の門出を祝福し、これからのご活躍を心よりお祈り申し上げます。