学科・大学院

日本語学・日本文学を
学ぶ人のために

いうまでもないことですが、昨今の科学技術の進歩は、めざましいものです。身近なところでいえば、携帯電話やスマートフォン、パソコン・・・・・・。地球の反対側に位置するような欧米の知人たちとも、いとも簡単にメールのやりとりもできる時代です。あたかも地球が狭くなったしまったかのように、さまざまな点で国際化がどんどん進んでいるのが、現代という時代です。みなさんのなかにも、何年間か外国暮らしをした人、またそうした人を友人にもっている人、あるいは外国暮らしの人とメールをやりとりしている人がいるかもしれませんね。現代の交通や通信の技術の発達のおかげで、国際的な交流がいよいよ盛んになってきました。みなさん方にとっても、今現在はそうではなくとも、そのうち、外国のかけがえのない親友が出現するかもしれません。

私たちは今日、こんなふうに国際化という新しい歴史の状況に直面させられつつあります。そうであればあるほど、じつは逆に、自分たちの日本の文化とはどんなものか、をいっそうよく知っておく必要があります。友だちと親しくなるためには、自分がどんな人間かを知り、その自分を相手にもわかってもらう努力をしなければならないのと、同じことです。ですから、我々日本の長い歴史のなかではぐくまれてきた言葉、それによって創られてきた文学や文化を、もっともっと知ろうではありませんか。

たいていの大学の文学部には、日本文学科と呼ばれる学科があります。これは、日本の言葉やそれによって創られた文学とはどんなものかを考える学科です。しかし、一口に日本の言葉といっても、長い歴史のなかでは大きな相違や変化が生じてきています。たとえば、「うつくし」という古語をとりあげましょう。この語が盛んに用いられるようになった平安時代では「美しい」と表記して美的な意味を表す現代語とは異なり、かわいいと思って情愛をそそぎたくなるような気持を表す言葉でした。こうした言葉の問題以外にも、時代の変遷にともなって、発想や価値観などにも大きな変化が生じてきたのです。
また、7世紀末ごろから記載されはじめて今日に及んでいる日本文学の長い歴史は、じつに豊かで多様な文学の形態を生み出してきました。神話や説話のような伝承的な文学、和歌や漢詩や俳句や近代詩のような韻文文学、物語・小説や随筆・評論のような散文文学、あるいは能・狂言や歌舞伎・近代劇のような演劇文学などとじつに多岐にわたっています。

通常、日本文学科という学科は、研究分野がそのように多岐にわたるところから、国語学(日本語学)をはじめとして、文学研究では上代文学(奈良時代まで)、中古文学(平安時代)、中世文学(鎌倉・室町時代)、近世文学(江戸時代)、近代・現代文学(明治以後)と、ほぼ時代ごとに区分した専門分野から構成されるのが普通です。成蹊大学の場合、その全領域にわたって、それぞれの学界の第一線で活躍する先生方があたっています。その先生方が具体的にどのような研究をしているかは、個人別の項目をごらんください。

みなさんがこの学科に入学したとして、どんな学習・研究をすることになるか簡単に説明しましょう。1,2年次。外国語その他の一般教養科目をも学びながら、いよいよ日本文学研究への入門です。日本の言葉や文学の基礎的な知見を身につけながら、はじめて日本語や日本文学の巨大な全体像をながめわたすことになります。そこでは、今までまるで知らなかった数々の文学現象に出逢うはずです。そして、そのなかで最も関心のひかれた問題に、こんどは自分自身の力で立ち入り、問題の解明にあたるのです。そのためにに成蹊大学では、3・4年次に、専門分野別の演習(ゼミナール)授業を開講しています。そこでは、一人ひとりの学生が自分の問題を深く掘り下げ、やがてそれを卒業論文として結実させることになります。その卒業論文とは、大学4年間をどう過ごしたのかの青春の日々の証であるといってもよいでしょう。どんなすばらしい成果が得られるか、さあ、挑戦してみましょう。そのためには日本の言葉と文学の巨大な全体像を見わたすという最初の心がまえを、常に忘れずにいることが大事です。

ここで、ひとつクイズをためしてください。次の(1)~(6)は同じく短歌形式の歌ですが、どんな時代のどんな人の歌かわかりますか。それはともかく時代別に並びかえてみましょう。8世紀の昔から現代にいたるまでの歌です。

  • (1)
    しきしまのやまと心を人問はば朝日ににほふ山桜花
  • (2)
    見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
  • (3)
    一粒の向日葵(ひまわり)の種まきしのみに荒地をわれの処女地と呼びき
  • (4)
    うらうらに照れる春日に雲雀(ひばり)あがり心かなしも独りし思へば
  • (5)
    あかあかと一本の道通りたりたまきはる我が命なりけり
  • (6)
    花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

日本の言葉と文学の長い歴史は、このようにすばらしい歌々をもはぐくんできたのです。その多様な豊かさは、悠久の時をたたえるような森にたとえてもよいでしょう。その奥深く豊かな森の中を散策するうちに、今まで見かけたこともない美しい鳥や蝶にもきっと出会えるはずです。

クイズの答えと説明を確認する

(4)(6)(2)(1)(5)(3)が正解。

参考までに、
(1)は江戸時代の本居宣長
(2)は鎌倉時代の藤原定家
(3)は現代の寺山修司
(4)は奈良時代の大伴家持
(5)は大正時代の斎藤茂吉
(6)は平安時代の小野小町

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