英語英米文学科の学び

世界を理解する Explore the World.

授業の事例から:「Seminar 600/c」履修学生インタビュー

社会、そして世界を理解する

ー英語や文学を通じて

―「Seminar 600/c」ではカズオ・イシグロの『日の名残り』を扱っています。
作品を読み進めていくうえで、印象に残った点などを教えてください。
I・Y:「信頼できない語り手(an unreliable narrator)」の存在です。語り手の執事スティーブンスの願望や道徳的な価値観が意識的か無意識的なのか曖昧なまま、事実とは異なる内容が語られることもあり、その真偽を見極めながら読み進める必要があるんです。作品中で語られる内容が信頼できないケースもあることを初めて学んだときは衝撃で、同時にとても面白いと思いました。
M・A:本作品ではイギリスの階級制度が色濃く反映されており、その中でも「執事」とい う職業がメインに取り上げられています。授業では「理想の執事の姿」というものを考えることが狙いのひとつなのですが、「理想の執事」を定義づける背景には、過去の体験や生活環境など様々な因果関係があり、徐々に語り手の背後に抑圧された感情や事実を明らかになっていくところが面白かったです。
―原文(英語)で文学作品を読むことの魅力や難しい点を教えてください。
I・Y:普段使う単語と比べて語彙レベルが高いので、読み進めるのに苦労することもあります。ですが、その単語の意味やなぜその単語を選んで使っているのかなどを調べていくと、作者の気持ちや当時の社会背景などがわかってきて、読み進めるのが楽しくなります。今はいつでも日本語訳が手に入る時代だからこそ、このステップを大切にしたいと考えています。
―使用される言語が異なると文化や社会も変わると言われています。
そのような差異に接したことはありますか?
M・A:留学生の友人と日本語の婉曲的な表現を理解するのが難しいという話をしたことがあります。日本語では直接的な表現をするよりも、少し遠回しな表現を使うことが多いですよね。反対に、英語は様々な人種で使われるということもあり、誤解をさけるために直接的な表現を多用します。使用言語が異なるとコミュニケーションの取り方が変わる好例だと思います。
―入学前と現在で、世界や社会の見方が変わったという感覚はありますか?
どのように変わったか、教えてください。
I・Y:様々な観点から各国を学ぶことで、各国についての知識がとても増えたと思います。イギリスを例にとると、「多民族・多文化国家」であるということや、「階級制度の名残り」が間違いなく存在していて、多くの歴史や文化的背景が関わっていることを知りました。逆に、イギリス出身の先生が紅茶をおいしそうに飲んでいるのを見た時がまさにそうだったのですが、それまで持っていたイメージが確信に変わることも多いです。
M・A:文学作品の中には、その当時の社会情勢や世界の出来事が背後に隠れていることがあり、個人レベルの行為が国々の関係に影響を及ぼしている場面が見受けられます。そのような作品に多く触れてきたことで、世界や社会の出来事を同時期の文学作品と紐づけて考えるようになりました。そして、現在の自分に置き換えると、私という「個人」の小さな行為の積み重ねが、「社会や世界」という大きな事柄に働きかけることができるかもしれないという考えを持つようになりました。

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