成蹊高校の学習旅行は、生徒主体で企画・立案されることが大きな特徴です。
高校1年生の探究活動で班ごとに旅行の目的や行程を考え、クラス発表・学年発表を経て審査員によるプレゼン大会で順位を競います。
上位に選ばれたコースが翌年の学習旅行として実際に実施される仕組みです。
教員提案のコースも加わり、生徒は自ら希望するコースを選択し、20名以上の希望者によって成立実施します。このように、企画から
参加まで一貫して生徒の主体性が尊重されている点が、成蹊ならではの学習旅行です。
この夏は「釧路」「福岡」「隠岐諸島」の3コースが行われました。
釧路コースについては校長ブログに詳しく紹介されていますので、ぜひご覧ください。
https://www.seikei.ac.jp/jsh/schoolguide/diary/2025/19796.html
ここでは島根県隠岐諸島コースの様子をご紹介します。

隠岐諸島コースは、
・歴史の舞台となった島を訪ねて文化や自然を学ぶ
・全国から集う高校生・大学生・社会人と交流し、多様な生き方に触れる
・ユネスコ世界ジオパークに認定された豊かな自然を五感で体感することを目的に実施されました。

行程の様子
 1日目:隠岐の自然と文化に触れる
 隠岐空港に到着後、まず訪れたのは「隠岐自然館」。ここでは、ガイドの方から隠岐の島々の成り立ちや地質、固有の動植物について
 詳細な説明をいただき、隠岐の黒曜石に触れることができました。午後は塩の浜でシーカヤックを体験。
 透明度の高い海に囲まれながら、東京では味わえないスケールの自然の中で活動する楽しさを実感しました。夜は真っ暗な海で
 「海ほたる」を観察。幻想的な光に心を奪われると同時に、宿の方からその発光の仕組みを教えていただき、自然現象を科学的に
 学ぶ機会にもなりました。

隠岐自然館

塩の浜シーカヤック

 2日目:海士町での出会いと学び
 フェリーで海士町に渡り、隠岐國学習センターに到着しました。センターに在籍している本校の卒業生からプログラムの説明を
 受けた後、レインボービーチで「自分をあける」ワークに取り組みました。
 午後は生徒の半数が日本各地から集まった高校生である県立隠岐島前高校生との交流や、「大人の島留学制度」として島で働く大学生や
 社会人との対話を通して、「なぜ海士町に来たのか」「島で何を学んでいるのか」といったリアルな声を聞くことができました。
 生徒たちは、自分とは異なる価値観に触れ、自分の未来を考える大切なきっかけを得ました。

海士町→隠岐学習センター→レインボービーチ→隠岐島前高校との交流→大人の島留学生との対話

 3日目:多様な生き方を知る
 この日は6班に分かれて、それぞれ異なるフィールドワークを行いました。陶芸家、元プロ野球選手で漁師をしている方、
 セラピストとして「島の保健室」を運営する方など、島に移住し独自の生き方を実践している方々から直接お話を伺いました。
 島という環境で培われた価値観や人生観に触れ、進路や将来の選択について考える貴重な時間となりました。

移住した方々からのお話を聞く→おいしい隠岐牛もいただきました→フィールドワークの共有

 最終日:振り返りと別れ
 船小屋に集まり、参加者一人ひとりが今回の旅行で感じたことを発表しました。
 「海に行きたいという理由で参加したけれど、思っていた以上に多くの学びを得られた」
 「自分の価値観を大きく変えるきっかけとなった。未来の自分への“種”をいただいた旅になった」などの感想が聞かれ、
 充実した体験であったことがうかがえました。

お世話になった但馬屋さん→船小屋での最終ミーティング→心温まるお見送り

菱浦港を出発する際には、お世話になった隠岐國学習センターの皆さん、お話を聞かせていただいた島留学生の皆さん、島の保健室の方や地元の方々が紙テープで温かく見送ってくださり、心に残る別れの時間となりました。境港到着後には「鬼太郎ロード」を散策し、米子鬼太郎空港から東京へと帰路につきました。

「ないものはない」というキャッチコピーで知られる海士町。東京で暮らす高校生にとって、そこには「自分たちにはないもの」が数多くありました。自然、人とのつながり、多様な価値観。隠岐諸島での体験は、生徒たちにとって新しい視点や未来へのヒントを与えてくれるものとなりました。今回の学習旅行で得た「種」が、これからの高校生活でどのように芽吹き、花開いていくのか、今後が楽しみです。

冬休みには「鹿児島」と「瀬戸内」の学習旅行が予定されています。