校長ブログ「百代の過客」

一人の高校生から始まった「ウクライナ人道支援募金活動」

 昨年度の3学期の校長面談の際、一人の生徒が「ウクライナのために人道支援活動をしたい。」という話を聞かせてくれました。高校3年生の相原葵さんは、ウクライナに3年間住んでいたことがあり、現地にも友人がいるなど、ウクライナとの縁が深く、面談後には外部団体での支援活動を行っていました。今年度に入り、成蹊学園が彼女の声に耳を傾けて貰ったことから、学園と連携したウクライナ人道支援募金活動が実現する運びとなりました。

 そこで、6月15日(水)、相原さんは朝の朝礼でその趣旨を全校生徒に訴えました(下欄参照)。そして、16日(木)・17日(金)の両日、生徒会の生徒が協力する中、登校時と昼休みに募金活動を実施しました。昇降口の手前に立って募金の協力をお願いする生徒や、募金箱の前で対応する生徒など、何人もの生徒が関わってくれたことは、とても意義あるものと感じられました。その上、両日とも多くの生徒がその趣旨に賛同して、募金箱に向かってくれ、募金総額は 2日間で何と178,254円にのぼりました。これらの活動は、起点となった生徒の熱意やそれに共感した生徒の動きが学校全体を動かした結果と言えます。本校の建学の精神の一つである「品性の陶冶」が具現化された例であり、募金にご協力いただいた方々には、本当に感謝いたします。有難うございました。
昇降口手前で呼びかける生徒会の生徒
昇降口手前で呼びかける生徒会の生徒

 たった一人の生徒でも、アクションを起こすことによって、多くの人を巻き込むことができます。まさに今回の募金活動もそのケースで、自分が信じる道があった時、自らが決断して行動を起こすことの素晴らしさを教えてくれたと思いました。

募金箱の前で呼びかける生徒
募金箱の前で対応する生徒
昇降口に設置された募金箱へ募金する生徒
昇降口に設置された募金箱へ募金する生徒

 また、この活動と連携して、成蹊大学でも人道支援の募金活動や講演会を実施しています。6月20日(月)には前ウクライナ特命全権大使の倉井高志様の講演会が実施され、高校からは私と相原さんで参加させてもらいました。倉井様の知見ある現状分析や日本が取るべき姿勢を拝聴し、より身近なこととして、考えさせられました。そして、相原さんは朝礼で募金の御礼を述べると共に、日本の取るべき姿勢を全校生徒に伝えていました。

倉井高志様のご講演
倉井様に質問する相原さん
朝礼でお礼の挨拶をする相原さん

 最後に、相原さんが朝礼で全校生徒に向けて話した、心の伝わるメッセージを載せさせて貰います。

「おはようございます。現在報道されている通り、ウクライナはロシアから軍事的攻撃を受けています。今月3日に100日目を迎えてしまいました。
私は小学5年生から中学2年生までウクライナの首都キーウに住んでいました。ウクライナに住み始めたのは、ロシアがクリミア半島を併合するきっかけともなった、親ロシア政権に対する市民らの抗議運動であるマイダン革命がキーウで勃発した翌年でした。革命の後に私が実感したことは、ウクライナ人のアイデンティティが強まり、ナショナリズムが高まっていくだけで、ロシア人に対する差別などはありませんでした。私の印象では、ウクライナ人とロシア人はとても仲が良く、ウクライナ人とロシア人が結婚してロシアに親戚がいることは珍しくありませんでした。また、私が感じたウクライナの国民性は、困っている時に見ず知らずのアジア人の私を助けてくれるほど、心がとても綺麗な人が多い国です。
 にも関わらず、彼らは政治的事情に巻き込まれ、毎日毎日命の危険に晒されています。私の友達もポーランドに避難しています。ポーランドは多くの避難民を受け入れ、手厚くサポートしています。遠く離れた私たちは、行って助けてあげることが難しいですが、せめて募金という形でサポートできればと思います。昇降口で、衛生キットや仮設診療場の医療スタッフの派遣などの人道支援のために、日本赤十字社の募金活動を行います。もしご家族で趣旨に賛同される方がいたら、明日からの2日間寄付のご協力をお願いします!
私はウクライナに笑顔が戻ってくることを祈っています。」