学科・大学院
皆さんは、「英語学」ということばを聞いて、どんなことを思い浮かべますか。ひょっとすると、イメージが浮かんでこないかもしれませんね。それも無理はないのです。高校までの段階では、はっきりした形で勉強をしたという経験がないのですから。その意味では、皆さんにとって「新しい」学問分野ということになるのかもしれません。英語学とは、一言で言うと、英語を対象とした通時的・共時的言語研究、ということになります。少し難しくなってきましたね。もう少し分かりやすく説明しましょう。
まず、英語にも人間と同じように、歴史があります。皆さんが勉強している現在のような姿になるまでには、実は英語もいろいろな変遷を経てきているのです。英語は、だいたい1,500年くらい前にできましたが、その後、イギリスにおける社会的・政治的・文化的変化とともに、その姿も変化してきています。現在では、アメリカ、オーストラリアはもちろん、世界の数多くの国で使われるようになっていますが、この1,500年の間に起こった英語の変化を、皆さんは想像がつきますか。通時的研究とは、歴史的な研究といってもよいでしょう。さあ、一緒にタイムマシンに乗ってみましょう。
次に、現在の英語に注目して、その構造や機能などの「解剖」をしてみるのも面白そうですね。(1) John is easy to please. と (2) John is eager to please. はどちらも同じような単語が使われていますが、John の働き(機能)は全く違うのです。(1) における John はどちらかというと、本来目的語であったものが、主語の位置に来ていると考えてもよいかもしれません。それでは、(2) の John はどうなるでしょうか。さあ、英語の構造の特徴について解剖が始まります。英語の共時的研究は、現代英語の構造的な分析が基盤となります。
さて、人間は、5歳くらいまでの間に母国語を習得し、大人になると、その母国語について、無限の文を操る能力を持つことになります。これは、我々にとってあたり前のことですが、実は大変に不思議なことです。このような能力は、他の動物には全くみられないからです。そうなると、この人間だけが持っている言語能力は、研究する価値がありそうですね。皆さんも、ひょっとしてアメリカで生まれ育っていたら、今は英語を話しているかもしれませんよ。
今までのことをまとめてみると、次のようになります。英語学とは、人間の言語としての英語について、その歴史や構造を研究する学問分野ということになります。実は、まだまだお話しなければならないことがたくさんありますが、その続きは、授業でということにしましょう。
興味のある方は次の本を参考にして下さい。