学科・大学院

文学研究とは

大学で学ぶ文学とは、高校の国語の授業とは全く別のものです。また、学期末レポートなどで書くことが要求されている研究論文や、4年次に提出する卒業論文は、読書感想文とは全く異なるものです。
高校までの国語の授業では、作者の考えや意図を正しく読み取ることが要求されました。大学で学ぶ文学では、作品には作者のはっきりした考えや意図が表現されているという前提そのものを疑います。
文章を書いているとき、自分が思ってもみなかったようなことをいつの間にか書いていたり、最初考えていたのとは違った方向に進んでいったりすることがよくあります。
これを専門的な言いかたで言うと「エクリチュール(「書くこと」という意味のフランス語)の統御不可能性」と言いますが、作家がエクリチュールの統御不可能性とどのように戦いながら作品を書いていったか、作者が意図していたものと、意図していなかったものがどのように混じり合って作品が構成されていたか、あるいは作者の無意識に潜んでいた欲望がどのように作品中に現れているか分析することが文学研究の目的の一つです。
そのための方法は二つに大別されます。歴史的な視点から、作品が書かれた当時の社会・経済・文化的状況を調べ、当時それらについてどんな言説(意見)が形成されていたかを知り、こうした言説が作品にあらわれている言説とどのように相互に影響を与えているかを見ていく方法。もう一つは、精神分析的な視点から、作品で用いられている言い回しや表現、物語の構造などに注目し、作者が意図していなかった/意識していなかった欲望や思想がどのように作品に現れているかを見ていく方法です。