学科・大学院
成蹊大学「プロジェクト型授業」を実施している文学部国際文化学科の細谷広美教授の「国際文化基礎演習Ⅳ」(2年生対象)で、メキシコとオンラインでつなぎ(時差15時間)、黒宮亜紀先生(メキシコ国立南部国境大学El Colegio de la Frontera Sur准教授)に、現地から「メキシコ南部の国境:国境の町と国境を越える人々」というタイトルで講演いただきました。細谷教授の「プロジェクト型授業」では、人口の約2割が外国籍住民である群馬県邑楽郡大泉町観光協会の協力を得て、日本における移民政策と移民の方たちの現状を、移民政策の不在を含めて考察するとともにフィールドワークの基礎を学んでいます。
黒宮先生は、都市人類学及び移民研究を専門とされる気鋭の人類学者で、メキシコのイベロアメリカーナ大学で博士の学位を取得された後、現在チアパス州タパチュラ・キャンパスで、移民とトランスボーダープロセス研究グループに所属し調査研究されています。講演では、「移民」とはどのような存在か、国境の意味の多様性、グローバル化における一つの結節点として国境の町というサイトで起こっている現実についてお話しいただきました。メキシコというとトランプ政権時代に国境に壁を作る計画が進められたことが知られていますが、実際にはメキシコは「移民送出国」であるだけでなく、「移民受け入れ国」、「移民通過国」でもあります。歴史的にも多くの亡命者/移民/難民を受け入れてきています。
黒宮先生が研究されているタパチュラ市は、中米グアテマラとの国境に位置し、日常的に人々が仕事や買い物、教育のために正規・非正規ルートを問わず国境を往来し、あるいは国境をまたいで家族が交流するということがみられます。一方で、中南米からアメリカ合衆国への移住を目指す人々の通過点ともなってきました。しかし、2018年頃からハイチ出身者が急増するという現象が起こっています。ハイチでは地震によって多くの難民が生まれ、ワールドカップやオリンピック開催に伴う労働需要によってブラジルに渡った人々が、その後職を失い、アメリカ合衆国への移住を目指してタパチュラ市に集まっているのです。現在はハイチからの人々に加え、同様にアメリカ合衆国への移住を目指すアフリカ、アジア、中東出身者等、世界各地から様々な人々が集まり滞在しています。人口わずか36万人の街で、2022年度だけでも7万人以上の難民申請がなされており、このため、移民、難民を支援するIOM(国際移住機関)、UNCHR(国連難民高等弁務官事務所)、ユニセフをはじめとする国際機関や国内外のNGOなど、50以上の外部機関・組織が集まるという状況も生まれていることが伝えられました。
講演後は、実際にフィールドワークをおこなう際のアドバイスなど、学生たちの質問にも一つ一つ丁寧に答えていただきました。
日本を中心に、東アジアの様々な文化や歴史について学ぶ有富ゼミでは、長期休暇を利用して、日本各地の史跡等の調査のためフィールドワークを兼ねた調査旅行を実施しています。新型コロナウイルス感染症が広まって以降、調査旅行を中止せざるを得ない状況でしたが、今年は感染対策をしっかりと行った上で、1泊2日で奈良県の文化財や史跡を巡りフィールドワークを実施しました。
1日目は東大寺や正倉院に赴きました。天平文化の華でもある東大寺法華堂の仏像を見学し、二月堂からは眼下に広がる大仏殿や奈良町の様子を確認できました。正倉院では、宮内庁正倉院事務所の佐々田悠先生にご案内いただき、正倉院宝物の歴史などを学びました。
2日目は奈良文化財研究所や興福寺の発掘現場にお邪魔しました。奈良文化財研究所では、発掘された木簡がどのように洗浄・保管・保存されるのか、肉眼では読めない木簡の文字をどのように読むのか、などについて山本祥隆先生にご教示いただきました。興福寺の発掘現場では、発掘とは何か、現在どのような発掘が行われているか、などを奈良文化財研究所の垣中健志先生にレクチャーしていただきました。
両日ともに暑かったものの晴天で、有意義な研修旅行になりました。参加者からは、「普通なら絶対に行けないところに行くことができたり、見られることができたり、とても楽しかったです。」という感想がありました。
学生たちは、日頃は教室で文献や資料を用いて史跡や文化財について調べていますが、現地で実物を見て調査することで理解度は格段に増したようです。
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文学部国際文化学科 川村陶子教授の学部3・4年合同夏期集中ゼミで、国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所ユース担当コンサルタントの天野裕美さんがゲスト講義を行いました。
天野さんは川村ゼミの第1期生で、2003年に成蹊大学を卒業後、英国エセックス大学大学院で人権学の修士号を取得し、欧州・中東・アフリカ地域で国際協力の業務を歴任されています。その活躍の範囲は、JICA青年海外協力隊員(ヨルダン)、在カタール日本大使館専門調査員、UNDPスーダン事務所職員、UNHCRジュネーブ本部ユース・コンサルタントなど多岐にわたります。
プライベートでは学部留学時代の同窓生と国際結婚し、ビジネススクールローザンヌでMBAを取得しつつ長女を出産。現在は東京でご家族と暮らしながらUNDP駐日代表事務所で、UNDP・シティファウンデーション共催の若手社会起業家支援プログラム「Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)」の運営を担当されています。
ゲスト講義では、勤務先であるUNDPの活動やYouth Co:Labプログラムの紹介に続き、天野さん自身のキャリア形成についてのお話がありました。学生時代から国際協力の仕事を志し、国際機関勤務を目標に学位取得やインターンシップ、フランス語やアラビア語の修得等を行ってきたこと、JICAの制度を利用して経験を積んだことなどを具体的に語っていただきました。国際協力の仕事にも緊急援助から青少年支援、バックオフィスまでさまざまな分野や職種があり、自分の関心と特性にあわせたキャリア形成が重要だというお話など、卒業や就職活動を控えた現役学生への貴重なアドバイスもいただきました。
後半はゼミの後輩とフリートークで交流。「ハードな国際業務に携わりながらワークライフバランスをどのように達成したのか」「外国でマイノリティとして暮らすことの苦労は」などさまざまな質問が出て、あっという間に時間が過ぎました。
4年生の参加者は講義の後でこんな感想を寄せています。「豊かな人生経験やキャリアを積まれた天野さんから、学生時代を振り返る形でお話があり、自分と重ね合わせることで非常に刺激的な時間となりました。何よりも天野さんの人柄から人を惹きつける魅力を感じ、これから社会に出る私たち学生にとって、大切なものを教えていただいたように思います。」
UNDP駐日代表事務所のウェブサイトはこちら
Youth Co:Lab Japanの紹介はこちら
2022年7月4日(月)・6日(水)の2日間、細谷広美教授(文化人類学)のゼミで、アイヌ民族文化財団から関根摩耶さんを講師にお招きしお話を伺いました。細谷教授はアンデスの先住民文化に関する書籍を複数言語で数多く出版する他、「先住民族の権利に関する国連宣言」(2007年)の採択に関わったジュリアン・バージャーの書籍を翻訳出版しています。
関根さんは、アイヌ民族初の国会議員となった故萱野茂氏の故郷である北海道平取町二風谷(にぶたに)出身で、お祖母様が樹皮を用いた繊維を草木染し織るアイヌ伝統の衣服制作の第一人者でいらっしゃるなど「アイヌ」が当たり前に存在する環境で育ったそうです。高校生の頃からアイヌ語を広める活動を始め、慶応大学在学中には各種講演やラジオ番組、YouTube等を通じてアイヌ文化を発信。今年の3月に大学を卒業し、現在はフリーランスとしてこれまで以上に精力的にアイヌ文化を伝える活動をされています。
授業では、両日とも「トナカイ」「ラッコ」「コンブ」などの身近な単語がアイヌ語起源であることや、アイヌ伝統の工芸品や食べ物、関根さんの幼少時代のエピソードなどたくさんの写真とともにアイヌについての紹介がありました。
4日の3・4年生のゼミでは、ニュージーランドの先住民族マオリの人々が言語復興に用いた言語学習法「テ・アタアランギ」を通じて、アイヌ語を学ぶワークショップがおこなわれました。テ・アタアランギの時間が始まったらアイヌ語以外は一切使用せず、全てジェスチャーで教わります。学生たちは初めて聞く言葉に戸惑っていましたが、何度も反復練習することで自己紹介と買い物をする際の一連の会話を覚えました。楽しかったという感想とともに、「メモなどもせず、自分の中に言葉を取り入れて言葉にするため、非常に頭を使う方法で、だからこそ確実に身に付く」という感想が寄せられました。
6日の2年生の基礎演習では、体の部位を表す単語を、替え歌にあわせて体を動かし歌いながら教わりました。ゲーム感覚で楽しみながらアイヌ語に触れました。文字がない世界の人々の記憶力の強靭さ、「カムイ」を通じたアイヌの人々の世界観、人生観、アイヌは交易の民であったこと、狩猟、漁撈、採集などによって得られる豊かな食材をもとにした料理の話など、様々なことが伝えられました。
関根さんは、「私たちのことを「アイヌ」と括ることによって、もうそこから私たちは他の人たちとは異なる存在に区別されている気がする。みなさんの生まれた地域にもそれぞれの文化があり、そのルーツを持っている。アイヌが特別ではない。あなたも私も同じ。文化は異なっているからおもしろい。違いをどう生かすかが大切」というメッセージが伝えられ、同世代の関根さんの言葉だからこそ考えさせられることも多く、学生たちにとって大変貴重な時間になりました。
文学部川村陶子教授が担当する「国際文化英語演習<2>」(文学部国際文化学科2年次必修科目)の履修者有志とドイツ・ベルリン自由大学大学院のコネリア・ライヤー教授のゼミ生が5月にオンラインで国際交流を行いました。 2021年度・2022年度に続き3回目のコラボレーションとなります。 ライヤー教授は、ベルリン自由大学大学院東アジア研究プログラム(GEAS)副長・日本学部教授で、主な研究分野は、日本の地域や食、グローバリゼーション、科学技術です。コロナ禍で国際移動が妨げられていた2021年度、川村教授がライヤー教授と「オンラインで教育交流活動ができないだろうか」と話し合い、アイディアが生まれました。 ライヤー教授の大学院ゼミでは、日本の食文化を題材として「日本研究のメソッド(方法)」を修得しています。今回の交流は、ドイツの大学院生がZoomを使用して日本の学部生に日本語でインタビューをするというものです。ドイツ側は4名、日本側は6名が参加し、1対1ないし1対2のオンラインミーティングを行いました。 ドイツ側の大学院生は、本学の学生へメールでのアポイントメントやZoomのセッティングなどを行います。当日は、日常の食生活や海外における日本食などについてインタビューを実施。日本のポップカルチャーなど他の話題へ会話が発展することもあります。終了後は日独双方の学生代表がライヤー教授のゼミのブログに英語で報告記事を掲載します。 川村教授は、「ゼミのコラボレーションは毎回、日独双方の参加者に大変好評です。ドイツの学生には初対面の人と日本語でコミュニケーションし日本の若者の食生活を知る機会、日本の学生には日本語で気軽にできる国際交流体験となっています。 学生同士がメールでアポイントをとり、Zoomで面談するという方法もワクワク感につながっているようです。ライヤー教授とは今後も交流を続けていきたいですねと話しています。 今回参加したドイツ側大学院生の何人かは秋に来日予定だそうで、インタビュー相手とリアルでも会えるかも知れないと一同楽しみにしています。」と話していました。
国際文化学科2年 久保美月さんが書いた報告記事はこちら(外部リンク)
コネリア・ライヤー教授ゼミの大学院生が書いた報告記事はこちら(外部リンク)
2021年10月28日(木)、文学部国際文化学科の細谷広美教授(専門:文化人類学)のゼミ「3年生対象演習Ⅱh」で、新進気鋭の映像作家の太田光海氏を招いて、映像人類学についてお話いただきました。神戸大学、パリ社会科学高等研究院大学で学んだ後、マンチェスター大学で学位を取得し5カ国語を操る太田氏。現在シアター・イメージフォーラムで公開中の作品『カナルタ 螺旋状の夢』は、国内外で数々の賞を受賞し、今後国内各地での上映が予定されています。
南米エクアドルのアマゾンに暮すシュアール族の家族とともに過ごし撮影した作品には、鮮烈な映像体験とともに、森の姿、人々と森との関係、アヤワスカを通じてのヴィジョン、地域をめぐる開発、薬草をめぐる新たな模索等、今を生きる先住民の重層的姿が映し出されています。
授業では、映像人類学の代表的な作品をご紹介いただきながら、今、映像人類学で何が目指されているかということについてもお話いただきました。ゼミ生以外にも映像人類学に興味がある学生が集まり、様々な質問が飛び交いました。
2021年6月16日(水)・17日(木)の2日間、細谷広美教授(文化人類学)のゼミで、アイヌ民族文化財団から関根摩耶さんを講師として派遣していただきお話を伺いました。細谷教授は先住民族の権利に関する国連宣言の採択に関わったジュリアン・バージャーの書籍を翻訳する他、アンデスの先住民文化に関する書籍を数多く出版してきています。
日本では2019年にアイヌ新法(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)が成立し、昨年(2020年)には北海道の白老町に国立アイヌ民族博物館(通称ウポポイ)が創設されました。また、マンガ・アニメ『ゴールデンカムイ』が話題となり、同作は大英博物館で開催されたマンガ展(2019年)で大きくとりあげられています。講師の関根さんは現在慶応大学の4年生で、アイヌ民族初の国会議員となった故萱野茂氏の故郷でもある北海道平取町二風谷(にぶたに)出身です。各種講演やラジオ番組、YouTube等を通じてアイヌ文化を発信してきていらっしゃいます。
16日は基礎演習(2年生)の対面ゼミ、17日はオンラインで関根さんが所属する慶応大学のゼミと本学3、4年生の合同ゼミを開催しました。お話は「シシャモ」「ラッコ」、ファッション雑誌「non-no」(「花」の意)などの身近な単語が実はアイヌ語起源であるということからはじまり、町の活動として子供の頃からニュージーランドの先住民族マオリの人々の地を訪れ交流してきていること。樹皮を用いた繊維を草木染し織る衣服制作の第一人者のお祖母様から様々なことを学んだこと。宗教、工芸品、食べ物、歌、楽器、踊り、アイヌ語のミニ講座など盛沢山でした。近年は10代、20代の若者たちがSNSを通じてアイヌ語で会話をしているそうです。「カムイ」の話から最後に「天から役目なしに降ろされたものは一つもない(kanto oro wa yaku sak no arankep shiep ka isam)」という世界観が伝えられました。
締めくくりとして関根さんから「私たちのことを「アイヌ」と括ることによって、もうそこから私たちは他の人たちとは異なる存在に区別されている気がする。結局それがアイヌだけでなく他の多様な文化や人を区別、排除することにつながると思う」「いろいろな価値観、いろいろな人を受け入れるのが当たり前になるような社会になれば素敵なのではないかと考え、そのきっかけにアイヌが成り得るのではないかと思いながら発信を続けている」いうメッセージが伝えられ、同世代が多様な経験をしていることを知るダイバーシティの観点からも貴重な時間となりました。
文学部国際文化学科開講「文化人類学入門Ⅱ」(担当教員:細谷広美教授)で、山形大学ナスカ研究所のプロジェクトで御活躍されている山本睦准教授に、ゲストスピーカーとしてアンデス考古学と、世界遺産に登録されており、マチュピチュに次いで日本からの観光客の関心が高いナスカの地上絵研究の最前線についてお話しいただきました。
プロジェクトは、人工衛星画像やIBMと協力することでAIを駆使して、次々に新たな地上絵を発見し世界的に注目される研究成果をあげてきています。講義では、1950年代末に形成期の遺跡の発掘からはじまった日本のアンデス考古学研究が、コトシュ遺跡の「交差した手の神殿」の調査研究により従来の常識を覆したことで、当初から高く評価されてきたこと。ナスカの地上絵の調査研究が、最先端のテクノロジーを活用しつつ、実際には砂漠を歩き続ける地道な作業によって支えられていること。ナスカの地上絵が自然環境と関わる信仰と深く結びついてきたと考えられること。プロジェクトが現地の人々や山形の地域や子供たちとかかわるだけでなく、遺跡保存にも取り組んできていることなどが伝えられました。
2020年度前期は新型コロナウイルスの影響で対面授業が中止となり、オンラインの授業に移行しました。墓田ゼミでのプレゼン(研究発表)もオンラインで行っています。
この日の授業は学生によるプレゼンの回です。「新型コロナと国際政治:パクスアメリカーナは衰退するか」をテーマにプレゼンをおこないました。4名の発表者がレジュメとともに40分ほど説得力のある説明をしました。経済から軍事、外交にいたるまで、アメリカによる覇権の趨勢を多面的に考察する内容です。すでにアメリカの後退が指摘されるなかでアフター・コロナの動向を検証したため、負の影響が強調される形となりました。
プレゼンを踏まえて、ゼミの学生と発表者との質疑応答が行われました。発表者からは「パクスアメリカーナは衰退すると思うか」という問いが投げかけられ、ゼミ生からの回答が続きます。大方が「衰退する」と答えるとともに、覇権国のない「Gゼロ」の世界が続くだろうと推測しました。他方で、コロナの影響が衰退を強調している部分もあるので、より長期的なトレンドを慎重に見る必要があるとの指摘もありました。また教員からは、台頭する中国との関係では、アメリカとその他の自由主義諸国による巻き返しの動きにも注目すべきとの意見がありました。刺激的な議論になったことは言うに及びません。
対面授業が実現しないなか、オンラインの形で授業が続けられています。この日は内容、形態ともに、新型コロナと生きていることを感じさせる授業でした。
2020年1月23日、文学部墓田ゼミの学生が駐日ハンガリー大使館を訪問し、パラノビチ大使(H.E. Ambassador Palanovics)との懇談をおこないました。パラノビチ大使からは大使と大使館の仕事全般についての説明があり、その後、大使自らが学生との質疑応答に応じてくださいました。
ハンガリー人と日本人との違いに関する学生からの質問に対して、大使からはむしろ共通点のほうが多いとの回答がありました。姓・名の順という氏名の表記も日本とハンガリーで共通しているとのことです。
日本とハンガリーが修好150年を超え、様々なレベルでの交流が進むなか、今回の大使館訪問は二国間の友好関係を感じさせるものでした。学生にとっては普段知ることのできない外交の世界を垣間見る有益な機会となりました。
文責:墓田 桂(文学部教授)
2020年1月9日、文学部墓田ゼミで、駐日ハンガリー大使館からシェプレーニ・ガーボル(SEPRÉNYI Gábor)参事官をゲスト講師として招き、特別講義を開催しました。
講義のテーマは「欧州連合:過去、現在、未来(European Union: Past, present and future)」です。
シェプレーニ参事官の講義はEUの歴史と組織、役割に言及するものでした。ロベール・シューマンやジャン・モネ、ヘルムット・コール、フランソワ・ミッテランといった欧州統合の推進者を紹介するとともに、欧州石炭鉄鋼共同体から現在の欧州委員会まで、EUの組織について詳細に説明を行いました。
同氏は、EUは国家でもなく、単なる国際組織でもないという点で、他に類を見ない存在であると説明します。欧州諸国間での人の移動の自由を実現した「シェンゲン領域」や共通通貨ユーロなど、EUの業績も多くある一方で、移民問題やトルコの加入といった課題も残されているとのことです。
今回のゲスト講義は、EU情勢を理解する有意義な機会となりました。
文学部細谷広美教授の企画で「世界の言語文化(ケチュア語)」を担当するイルマ・オスノ非常勤講師が主演する音楽ドキュメンタリー『アヤクーチョの唄と秩父の山』の上映会(成蹊大学アジア太平洋研究センター主催)が開催されました。監督をお招きしたトーク、そしてチューバ、バイオリン、パーカッションを交えたミニライブが開催されました。
イベントの様子は、こちらからご覧いただけます。
6月16日(水)の「国際文化基礎演習IIc」(2年生対象)では、2012年度卒業生の土井美穂さんを招き、豊富な国際体験についてのお話を伺いました。
土井さんは、学生時代に世界一周を経験。卒業後は出版社に勤務。「いずれ外国のどこか一ヵ所に長く住んでみたい」という夢を実現すべく、4年後にドイツへ渡りました。語学学校で学び、6月からヨーロッパを拠点に活動する日本語情報メディアの「ドイツニュースダイジェスト」でジャーナリスト・編集者として勤務されます。
授業では「外国を旅する 外国に暮らす 外国で働く」というテーマで、学生時代に考えていたこと、ドイツ・ベルリンの魅力、実際に外国に住んで感じていることなど様々なお話をしてくださいました。外国に興味を持っている学生や国際意識の強い学生たちは、土井さんの話に熱心に聞き入っていました。
「学生のうちから種をまこう!」
「小さなことでもいいから挑戦して欲しい!」
「やりたいと思ったときが旬!」
夢に向かって挑戦を重ねてきた土井さんのメッセージは、学生たちの心に響いているようでした。
「エスニック・スタディーズ」(1年生対象)の2018年11月2日の授業は、ラテンアメリカ音楽レクチャ―コンサート(成蹊大学アジア太平洋センターが主催)に参加し、ラテン音楽を体感しました。
プロジェクト型授業で、文学部国際文化学科細谷ゼミの学生たちが、ブラジル人をはじめとする外国人住民の割合が高いことで知られる群馬県邑楽郡大泉町でフィールドワークをおこないました。夏休み中に、国策としておこなわれていたブラジル移民の研修施設があった「移住ミュージアム」(海外移住と文化の交流センター、神戸市)を訪れ、ブラジル移民の歴史についてレクチャーを受けた後、館内を案内していただきました。「国立民族学博物館」、「人と未来の防災センター」の3箇所を訪れる研修旅行は今年で3回目です。その後、2度にわたって外国人住民が町の人口の約18%を占める群馬県邑楽郡大泉町を訪問し、多文化共生がうたわれるなか移民の人々が直面している課題、移民政策についてフィールドワークをしました。
10月21日2016年度3年生の細谷ゼミで、昨年に続き1泊2日の研修に行きました。1日目は大阪の万博公園にある国立民族学博物館を見学。まずは「太陽の塔」の前でみんなで記念撮影。国立民族学博物館は私自身がここで学位をとり研究員としても過ごした経験から、ラテンアメリカ地域のコーナーの展示を解説。続いて各自電子ガイドを手に見学。電子ガイドは展示内容のデータや関連映像資料をその場で見ることができる優れものです。インドのリキシャ、モンゴルのゲル、アフリカの仮面、手回しオルガン、各地域の婚礼衣装、アイヌの家、ねぶたなど多彩な世界にわくわくします。
当日は特別展として「見世物大博覧会」も開催されていました。へび女等が登場するおどろおどろしい雰囲気の見世物小屋や、昭和の匂いのする看板。展示に関わった鵜飼正樹先生は、大衆演劇の役者経験もある方です。 その後は神戸に移動し、夜はエスニック・タウン中華街で夕食。翌日は、まず「海外移住と文化の交流センター」へ。ここでは、日伯協会の天辰充幸さんからブラジル移民の歴史について約1時間のレクチャーを受けた後、移住ミュージアムを案内していただきました。この施設は国策として行われたブラジル移民の、渡航前の研修に使用された施設を保存し博物館にしています。昨年に続き日伯協会の方々が、学生たちを迎えるために色々準備して下さっていて、大変ありがたかったです。
午後に訪れたのは「人と防災未来センター」です。ここでは、阪神・淡路大震災関係の様々な資料が展示がされています。今後起こる可能性が高い地震にどのような備えと対応が必要なのかを考えるとともに、災害をどのように記録、記憶し、継承するかということについて考えました。合わせて語り部の松本幸子さんにお話を聞かせていただきました。当事者の方から直接震災の経験を聞くことはとても貴重な体験となりました。1泊2日という短い時間でしたが、盛りだくさんの研修となりました。
2016年度後期開講2年生対象の文化人類学の基礎演習(細谷担当、国際文化基礎演習Ⅲ)で、戦争体験を聞くプチ・フィールドワークを実施し、レポートを冊子にまとめました。
現在の大学生は、戦争を経験した人々から直接話を聞くことができる最後の世代です。この実習のもう一つの目的は「大きな物語」としての書かれた歴史、いわゆる正史と、「大きな物語」に回収されない多様な物語、歴史の存在に気づくことです。
アメリカのワシントンDCにあるスミソニアン博物館群の傍にあるホロコースト博物館は、ユニークな展示方法を取っていることで知られています。来館者は入り口でまずパスポートサイズの小冊子を受け取ります。そこにはある人物の写真と生年月日がのっています。そして、エレベーターでまず上階に行き、下りながらホロコーストの歴史を辿ります。ユダヤ人の排斥は、例えばユダヤ人が公園のベンチに座ることを禁止される等、日常生活の中で徐々に始まりました。手にしている冊子をめくると、その人物がそれぞれの局面で、どこで何をしていたかを平行して辿ることができます。そして、最後にその人物が生き延びることができたのか、あるいはどこで命を落とすことになったのかを知ります。「大きな物語」としての、歴史としてのホロコーストと約600万人という犠牲者数は、数字に還元できない個々の無数の物語から成り立っているのです。他方で、この博物館自体がホロコーストの存在を否定する歴史観に対して、ホロコーストがあったということを示すために建設されています。
日本における戦争の経験も、住んでいた場所や年齢、性別、社会的背景によって多様です。レポート作成時には体験として聞いた話を「大きな物語」としての歴史の中に位置づけ、比較を行うことを課題としました。地域の図書館に行き郷土資料を調べたり、自治体が運営している戦争体験をきく会で個別にお話を聞いたり、家族の日記を発見したり、当時の教科書や試験を資料として用いたり、それぞれが工夫を凝らしました。
学生たちの多くが語っていたのは、戦争について本で読んだり、テレビで見るだけでなく、実際に自分で話を聞くという体験の大きさでした。このことは現在世界で起こっている紛争を含めて、戦争について考える重要な視座になるでしょう。
11月11日(金)に、フェリス女学院大学教授でもあり日本オリンピック・アカデミー理事でもある和田浩一氏を「イギリスの歴史と文化B」の授業にお招きし、特別講義「近代オリンピックの歴史」を実施しました。近代オリンピック・パラリンピックの開始には、イギリスが大きく関わっています。
和田先生は、複雑なオリンピックの歴史を、その時々の国際情勢ともからませながら、大変に分かりやすく説明してくださいました。オリンピックは単なる「スポーツの大会」ではなく、芸術や文化の交流も含むものであること、4年に一度の大会は「オリンピック・ムーブメント」の「頂点」にすぎず、オリンピックが開催されていない年も「ムーブメント」はずっと継続されていること、など、多くのことを学ぶことが出来ました。
この講義は、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と本学との連携協定に基づき行われ、公開形式としたことから授業の履修登録者以外の学生、市民、教職員なども合わせ、100名以上が聴講しました。
2016年7月11日の「フィールドワーク論」の授業では、インド洋のはるか南に浮かぶ火山島レユニオンの民話の語り部をゲストにお迎えし、現地語による民話語りの実演をしていただきました。
レユニオン島はフランスの海外県で、公用語はフランス語ですが、人々の話すことばはフランス語をベースに近傍のマダガスカルをはじめアフリカ、インド、さらには中国などの人々がもたらしたことばが入り混じってできた「クレオール語」と呼ばれる混成語です。当日は地元の民話の語り部であるカンタン・ハゲン(Quentin Hagen)さんに、このクレオール語による2篇の話を教室で語っていただきました。逃亡奴隷の夫婦の話と、魔女になったお婆さんの話です。日本語も堪能なカンタンが用意してくださった邦訳文を見ながら、受講生は語り部の創り出す臨場感溢れるクレオールの世界をナマで堪能しました。
カンタンさんは地元で話すときと同じように裸足になって熱演し、終了後のQ&Aでは、受講生から出される数々の質問に丁寧に答えてくださいました。ふだん馴染みのない遠い場所の文化に直接触れ、また多文化共生を地でゆくような経緯をもつクレオールのフィールドを疑似体験できる貴重な機会となりました。
2016年6月9日(木)の「国際文化研究A」にて、卒業生で世界各地を教師・フォトエッセイストとして渡り歩く倉典暁氏の講演会『世界に暮らす~居候から見える異文化交流』が行われました。
卒業生が母校に帰って、在校生のために自分の経験を話してくれる機会は、学生たちにとっては、とても刺激的です。こういう機会を積極的に設けるようにしているのは、国際文化学科の魅力です。学生たちの感想には、「これまでは『机上』のことのように感じていた異文化理解、異文化交流ということを、はじめて『リアル』に感じることが出来た」といったものが多く見られました。
講演の中では「南米流美味しいコーヒーの入れ方」の実演もありました。国が違っても、なぜか南米の国々の人の間でこの方法が「共有」されているそうです。試飲させてもらった学生は、みな、「美味しい!」と、びっくりしていました。
講演会の様子は、大学のHPや学園のFBでも以下のように紹介されています。
倉さんは本学文学部を卒業後、2001年に渡米以来、アジア・ヨーロッパ・北南米の各地を教師およびフォトエッセイストとして渡り歩き、ノルウェーでは大学講師として滞在中にノルウェー初の広島原爆展を開催したり、ラトビアでは高校教師として滞在中にNHK BSの「地球アゴラ」に出演しラトビアの文化を紹介したりするなど、世界と日本をつなぎ、また、ネイティブとアウトサイダーの狭間に現れる人間模様を写真と物語で描くストーリーテリングをライフワークとしています。
倉さんは各国でのさまざまな経験を語ってくださり、世界を渡り歩く行動力を感じた学生達は、倉さんの話を興味深く聞き入っていました。
2015年度のゼミで、教室を飛び出し1泊2日で関西にある国立民族学博物館、「海外移住と文化の交流センター」、「人と未来防災センター」を訪問しました。
大阪万博公園にある文化人類学研究の基幹機関の国立民族学博物館は、館内をめぐることで日本を含め世界中を旅し、各地の文化や民族にふれることができます。博物館と関係が深い教員が中南米展示について説明した後、各自ガイド機器を手にして館内をみてまわりました。あわせて映像資料が集められたビデオテークを楽しみました。また、アイヌの人々に関する特別展を見学しました。
神戸にある海外移住と文化の交流センターは、日本の国策としておこなわれたブラジル移民が、出発前に研修を受けた建物を博物館として保存しています(写真1)。日伯協会の三井敏明さんに、ブラジル移民の歴史について講義を受けた後(写真2)館内を見学しました。写真は移民の人々が使用した農具です(写真3)。オリンピックが開催されるブラジルがより身近になりました。
阪神淡路大震災後に建設された「人と未来防災センター」は、震災、復興、防災に関する詳細な資料を展示しています。語り部の大塚迪夫さんのお話も伺いました。崩壊した自宅の1階から脱出して一命をとりとめた大塚さんが強調されたのは、家具を固定することの重要性です(写真4)。
物や声に直接ふれることのインパクトは大きく、「国立民族学博物館では自分の常識が世界の常識ではないことを知り、海外移住と文化の交流センターでは今まで知らなかった日本の歴史を知り、人と防災未来センターでは自分ともっと後の世代のためにも「減災」を真剣に考えるべきだと感じた」(C.K.)
2016年度の国際文化基礎演習Icは、「在日外国人」をテーマに行いました。テキストとして田中宏『在日外国人第三版―法の壁、心の壁』(岩波新書)、を読んだ上で、学生たちは、さらに、他の著作や論文、新聞記事、雑誌記事、インターネット情報などを調べ、グループ発表を行い、活発な議論を重ねました。
授業を進める中で、実際に日本で暮らしている外国の方と直接会ってお話しをする機会をもちたい、ということになりました。国際文化学科には学内外でさまざまな国際協力の活動をしている学生がいます。その中の1人で、在日アセアン青年ネットワーク(ASEAN Youth Network in Japan)の副代表をつとめたこともある4年生の渡邊美月さんにご協力いただき、2人の留学生をクラスにお招きすることが出来ました。1人はミャンマーからの留学生ラインさん、もう1人はベトナムからの留学生チャンさんです。
当日は、まず、渡邊さんからご自身のASEAN諸国での体験や留学生支援の活動についての発表をしていただき、続いて、2人の留学生の方たちから、ご自分の国について、日本に留学した理由、日本に来て驚いたこと、困ったこと、楽しいこと…などのお話をうかがいました。「日本は物価が高くて大好きな果物をあまり食べられない」など、「生」の声から多くのことを学びました。
その後、2つのグループに分かれて、さらに親しく交流しました。国は違えど、学生同士、おしゃべりがはずみました。ミャンマー、ベトナムの魅力についても沢山教えていただくことが出来、学生たちは、2つの国をより身近に感じることが出来るようになったそうです。
活躍する上級生の話を聞いたり、日本で勉強している留学生と直接交流することは、学生たちにとって、とても刺激的で有益な体験となりました。
2015年6月10日、文学部国際文化学科で開講している「国際文化研究の現在」の授業に、国連WFP(国連世界食糧計画)駐日代表のStephen Anderson氏と同イエメン事務所の堀江正伸氏にゲスト講師として来ていただきました。
Anderson代表からは組織の活動について詳しくご紹介をいただきました。また、堀江氏からは、内戦に見舞われたイエメンでの援助活動に加えて、国際機関でのキャリア形成についてもご説明いただきました。
学生に書いてもらったコメントシートには「日本のみならず世界に視野を広げられるようになりたいと感じた」「食べ物に困らない環境にあることに感謝の気持ちを忘れないでいきたいと思いました」「機会があればぜひまたお話を聞きたいです」といった前向きなコメントが多くありました。
1時間に及ぶ特別講義とその後の質疑応答で、世界の飢餓(hunger)の状況と人道援助活動の最前線について理解を深めることができたと思います。
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