WEBドラマ 現代経済学科編の解説

大切な贈り物
〜フィールドワークが僕に教えてくれたコト〜

第1話
「スマホで買えないもの?」の解説
フィールドワークの手始めはエクスカーション

地理学や民俗学、人類学などを中心にフィールドワークという研究手法が用いられます。地域経済の研究でもフィールドワークは盛んです。理論や計量分析だけでは、地域で生活する人、働く人たちの息遣いやその土地のカルチャーを理解しきれないからです。情報化の進んだ社会だからこそ、ネット上ではなく、現場でナマの情報を体感することが重要になっています。Web上の情報というのは誰でも接することができるわけですから、自分オリジナルの情報にはならないわけですし。

ひとくちにフィールドワークと言っても、調査対象地域での、土地利用の把握、様々な計測作業、企業や住民に対するアンケート調査や聞き取り調査、一定の期間、コミュニティに入り込むことで実態を把握する参与観察など、さまざまな方法があります。

エクスカーション(巡検)と言いますが、フィールドワークの入り口は、まず、現地にいくこと、そして五官でもって土地の空気を感じながら歩くこと。景観の特徴を観察するとともに、その土地で経済的な営みに従事している人に話しかけてみましょう。信頼関係を構築できれば思わぬ展開があったりもします。

でも、タカシのおばあちゃんの故郷がどんな地域か、あらかじめ予習してから出掛けた方がよかったですね。

第2話
「旅先での出会い」の解説
伝統工芸品は地域産業資源の一つ

地域経済研究でのフィールドワークの目的の一つは、地域産業資源の発見です。

資源といった場合、古典的には、石炭や鉄鉱石といった鉱産資源をイメージしますが、こんにち地域資源といった場合には、文化財、景勝地、温泉といった観光資源、その土地で栽培・収穫(水揚げ)されるさまざまな農産物や水産物、そこで生産されるさまざまな鉱工業品、そして、その生産に必要な技術まで、さまざまなものが含まれます。もちろん、河原に咲く曼珠沙華の群生も、資源になり得ます。

こうした地域産業資源を認識して、それを活用した新たな商品やサービスを考案して、取引や雇用を拡大することが、近年の地域経済政策の重要な柱になっています。

ドラマでタカシたちが出会った手漉き和紙のような伝統工芸品も重要な地域産業資源ですね。

関東地方では、東京都の東京染小紋、江戸指物、栃木県・茨城県の結城紬、益子焼、笠間焼、千葉県の房州うちわ、神奈川県の箱根寄木細工、鎌倉彫などが、国によって伝統的工芸品に指定されています。ドラマの舞台になったのは、埼玉県東秩父村で、隣接する小川町とともに、手漉き和紙の産地です。とくに楮(こうぞ)だけを原料にした「細川紙」の生産技術は国の重要無形文化財となっています。

第3話
「最高のプレゼント」の解説
地域産業資源の融合により地域の活性化をはかる

地域経済づくりに向けた次のステップは、地域産業資源に付加価値をつけるべく、地域の中の資源と資源を結びつけたり、人材と人材を結びつけたりすることです。例えば、農産品を農産品そのままとして出荷するだけではなく、地域の工場で加工して、それを地域のブランドで流通させるようなことを「6次産業化」などと言います。1次産業、2次産業、3次産業という言い方がありますが、1+2+3も、1×2×3も6になることに由来しています。あるいは、地域の中に培われた技能と技能と結びつけることによって新しい製品が生まれる場合もあります。ドラマでは、和紙職人の技能と、絵描きの男性の技能と、民芸品を販売する喫茶店の男性の技能の3つが結びついて、新しい製品が生まれることになりました。

こうした地域産業をSNSなどで発信すれば、地域の経済的活性化に結びつくだけではなく、地域の人たちの働きがいやアイデンティティを醸し出すことにもつながってきます。

タカシとリンカは、エクスカーションを通して、知らず知らずのうちに、現代の地域づくりの奥儀を体験してしまったのです。

さあ、皆さんもフィールドでの地域資源発見の旅へと出発し、現代経済の現場を体感しましょう。若い頃にはそれが往々にして、自分探しの旅であったりもします。

解説

小田宏信教授

研究分野

人文地理学、経済地理学