WEBドラマ 総合経営学科編の解説

正解はひとつじゃない!
〜ダンスと仲間と経営学〜

第1話
「私、ダンス部やめる!」の解説
優れたリーダーが求めるのは・・・・・・

チームに目標達成を促す能力のことをリーダーシップといいます。サヤカとユカはどうしたらダンスチームをうまく導けるかで対立しています。サヤカはフィーリングを重視し、ユカはテクニックを重視していますから、2つのタイプのリーダーシップのどちらを選択するのかがダンスチームにとって望ましいのかを議論しているように見えます。

リーダーシップ論でも、ちょうどサヤカとユカと似た議論が行われてきました。でも、研究者たちが優れたリーダーを調べても、「優れたリーダーシップがこれだ!」という正解を得ることはできませんでした。テクニックかフィーリングか、どちらかが絶対に正しいのでしょうか。

ここでさらにリーダーシップを多次元で考えてみましょう。サヤカとユカの会話では、フィーリングかテクニックの「どちらかが」大切かという点で対立していますが、フィーリングとテクニックの重視の度合は図のような二次元で描くことができるかもしれません。A点はフィーリングを強調し、テクニックは余り重視しない、B点はその反対になっています。C点のようにどちらも強調できればいいのですが、現実的には、D点のように双方のバランスをとるという考え方もあります。さて、どの位置が望ましいのでしょうか。

これはマネジリアル・グリッドという有名なリーダーシップ論の考え方なのですが、その理論では会社での部下の管理を対象に仕事(テクニックに近い)と人間関係(フィーリングに近いかもしれません)のどちらをどの程度に強調するかを、このマトリックスで考えていきます。

第2話
「心で踊るダンス?」の解説
文化に溶け込む、それとも文化を超える?―2つの戦略

ユカは、アフリカ人の個性的なダンスに感動しました。今の時代は社会が国際化しています。日本でも外国の商品を見かけますし、日本の製品が外国でもたくさん売られています。経営学の経営戦略論では、海外に商品を販売する時には2つの方法があると考えています。1つは、どの国に対しても同じ味の商品を販売する方法です。たとえば、コカ・コーラは世界中のどの国で飲んでも同じ味がします。これをグローバル戦略といいます。もう1つは、その国々の文化に合わせて独自の商品を開発して販売することで、これをマルチドメスティック戦略といいます。

アフリカ人のダンサーは、自分たちの故郷のダンスを日本でも演じていました。これはダンスのグローバル戦略といえるかもしれません。ダンス経験が豊富だったユカはそれに感動しますが、日本人の誰にもその魅力が伝わるかどうかは分かりません。「揃ってない、カッコ悪い」と思われるかもしれません。同じようにグローバル戦略は、世界規模で同じ商品を製造販売できる点で有利ですが、現地にその商品が受け入れられない危険性があります。

それではアフリカ人がマルチドメスティック戦略をとって日本の盆踊りを踊っていたらどうでしょうか。それは日本人には親しみやすいでしょうが、彼らの真の魅力は失われてしまったかもしれません。同じように、各国の文化に合わせた商品を製造し、販売すれば、確かに現地では受け入れやすいかもしれませんが、その会社が本国で培ったノウハウやブランドなどは生かせないかもしれません。

つまり、グローバル戦略もマルチドメスティック戦略も、ともに長所と短所があるということになります。

第3話
「そして学園祭へ!」の解説
正解は1つじゃない!―経営学の基本的な考え方

サヤカは「正解は、1つじゃないんだからさ」とユカに話しかけます。実は、これは経営学のもっとも重要な考えにも通じるものです。経営学に関心のある皆さんは、経営学部に入れば、ビジネスを実践する最善の方法や、人間を管理する最善の方法が分かると思うかもしれません。しかし、現実には、顧客や商品によって最善のビジネスの方法は異なりますし、管理する相手によって最善の方法は異なるものです。このように状況や条件に適合した経営方法があるという考え方を条件適合論といいます。

これまで各場面で学んだ議論でも、実は条件適合論から考えなくてはなりません。チームの最適なリーダーシップは、マネジリアル・グリッドのある点に固定して決まっているわけではありません。それは部員の能力の高さや意識の強さによっても変わるでしょう。同じように、グローバル戦略とマルチドメスティック戦略のどちらかが絶対に正しいとは言えません。売るべき商品によって、また相手の国の状況によってどちらの戦略が望ましいかは異なることでしょう。

このドラマは、テクニックかフィーリングかというユカとサヤカの対立から始まりました。そして物語を通じて、ダンスサークルを導く上で「正解は1つじゃない」ということ、もっと具体的にいえば、サークルの状況によって、テクニックを強調すべき時もあれば、フィーリングを強調する時もある、そんなリーダーシップの難しさ、そして面白さがあることを二人は学んだことになります。

解説

上田泰教授

研究分野

経営組織論