学長メッセージ

学長 北川 浩

学長
AIは人間の仕事を奪う?

いまの世の中は非常に激しいスピードで変化しています。社会を変化させている大きな原動力は、AI関連技術やIoTなどのスマートテクノロジーの発達です。よくAI(コンピューター)やロボットに仕事を奪われると言いますが、奪われるのではなく、正確には今までの仕事のやり方を変えなくてはいけなくなるということです。AIを使いこなして仕事をする時、AIを使う人間にも今までとは異なる力が必要になってくるのです。では、その力とはどういうものでしょうか。

現在のAIが持ちえない三つの力

まず一つ目は、総合的思考力です。人間は、ある文化の中で生きてきたことで経験を蓄積していきます。それらの経験をつなぎ合わせて思考し判断するということ、つまりわれわれが「常識」とか「良識」などと呼んでいるものを、コンピューターは自分自身で手に入れることができません。コンピューターが出してきた結論を、常識や良識によって仕分けすることは、仕事として人間の手に残ると思います。

二つ目は創造的思考力です。過去のデータを使って何かを導き出したり判断したりするのがコンピューターの性質ですから、データがないと何かを考えることができません。人間はわずかなデータやデータが全くない状態から、ひらめきやインスピレーションのようなものによる意思決定が可能です。そういう人間のクリエイティブな思考力は、そう簡単にコンピューターには手に入れられないものです。

三つ目は、真のコミュニケーション力です。コミュニケーションとは本質的に意思や感情のキャッチボールなので、意思や感情を持たないコンピューターには真のコミュニケーションはできません。だから「おもてなし」のような真のコミュニケーションを必要とする仕事は人間に残されます。

スマートテクノロジーによって急激に変化しているこの社会で、自分はどんな人生を送っていくべきか、どんな能力を身に付けていけばよいかを考える際に、ポイントになるのはコンピューターがそう簡単に人間に置きかわらない部分なのです。成蹊大学がこれから目指していく教育の姿は、これら、総合的思考力、創造的思考力、真のコミュニケーション力を育むことです。

成蹊大学の教育の特長

総合的思考力を育むためになるべく広い視野を持って学んでいくことはとても大切なことです。しかしながら、ビジネスの世界においても日常生活においても、1人の人間が全ての物事を総合的に考え、コンピューターを上回る結果を出すことは簡単ではありません。そこで、得意な専門分野をもつ人が、自分の能力や特長を生かしながら、他の専門分野の人たちとチームを組んで協働することが、これからますます重要になっていくと思います。ある領域ならだれにも負けないという人たちが集まってチームを組むことによって、総合的思考、創造的思考を、コンピューターを超えるレベルで発揮することが可能になるのです。

成蹊大学は、こうした考え方に基づいて、「ゼミの成蹊」「プロジェクトの成蹊」「コラボの成蹊」という三つの柱 “Seikei Way” で教育を実践しています。

  • 1. ゼミの成蹊

    本学は創立以来伝統的に、「教師と生徒は心と心でつながる(師弟の心の共鳴)」という考え方をもっています。それが最もよく現れているのが、少人数で構成されるゼミナールです。授業の時間だけでなく、折に触れて先生と学生が時間を共有して一緒に何かをする。これが、創造的思考力や、社会人として生きていくための常識、真のコミュニケーション力を育んでいくと考えています。

  • 2. プロジェクトの成蹊

    実際に手で触って目で見る、課題があるところに実際に出掛けていって問題の本質を肌で感じる。そうした「本物に触れる教育」、フィールドスタディを大事にするのが成蹊の伝統です。「教室の外にも学びがある」という考え方のもと、フィールドワーク授業だけでなく、インターンシップや留学、ボランティア、課外活動などで学生たちが外に出ることを奨励しています。本物に触れて考えた経験によって、創造的思考力や洞察力は研ぎ澄まされていきます。

  • 3. コラボの成蹊

    多様な専門性をもった人たちが一つのチームになって共通の課題に立ち向かうことは、これからの社会ではあらゆる場面で求められるでしょう。学部ごとに縦割りになりがちな大学が多い中で、成蹊大学はすべての学部がワンキャンパスに収まっており、各学部の学生が互いに集まって様々なことができる環境が整っています。

大学は「ゴール」ではなく「スタート」

受験生のみなさんは大学を目指して一生懸命勉強していると思いますが、実は大学に受かることはゴールではなく、スタートにほかなりません。社会に出て自分らしい幸せな人生を送るためにどんな準備をすべきかを考える、そのスタートラインが大学入学なのです。大学での学びは、生涯学び続けるための礎だと考えてください。生涯学び続けるための積極性や自立性などを身に付けられるのが、大学という場所です。

たとえば課外活動、インターンシップ、留学などにチャレンジしてみる。あるいは、他学部の科目を履修してみる。受け身ではなく、自分から積極的に踏み出していける人に、大学は未来への大きな可能性を拓きます。
大学に入ったらあれをしよう、これをしようという、ワクワクした気持ちをもって、成蹊大学を目指してください。