経営学部伊藤克容
集団や組織の力を結集しないと、企業経営は上手く回りません。「企業の構成員に適切な行動をとるように動機づける」のが、マネジメント・コントロールの役割です。
組織構成員のポテンシャルを最大限ひきだし、のびのびと活躍してもらうには、マネジメント・コントロールの仕組みづくりと運用が重要になります。マネジメント・コントロールの概念は、組織構成員の業績を測定して、企業経営に活かそうという「管理会計」から派生しました。
マネジメント・コントロールに期待される役割は、時代とともに大きく移り変わっています。これは時代の要請に対応した必然的な結果でしょう。マネジメント・コントロールの理論を勉強することで、経営の実践に役立つ知識が得られるのはもちろん、企業経営の勝ちパターンの変化を把握することができます。
事前に計画した内容、業務での決まった手順を毎回、毎回きっちり達成しなければ、競争に勝てません。言うのは簡単ですが、実行はむずかしいことです。ちゃんとできているかどうかを丁寧にフォローし、問題があればすぐに対策をとる必要があります。当初のマネジメント・コントロールに期待された役割は、所与の条件のなかで最適な経営行動を促進することにありました。問題が発生したら(たいてい問題が起きる)、問題点を明確にし、注意を喚起し、すぐに修正を導く必要があります(低次学習といいます)。
競争が激しくなるにつれて、多くの会社では、事業戦略の見直しや生産現場での改善が不可欠になりました。目的地や方法が事前に明確に決まっている状況ではなく、よりよい目的地や方法自体を検討させながら、前に進めることが求められるようになりました(高次学習)。ゴール自体が不明確なので、会計情報に加えて、あいまいな状況でも機能する、ビジョンや組織文化などのコントロール手段も利用されるように、マネジメント・コントロールの体系は複雑化しました。
平成年間における、国内企業の国際競争力、パフォーマンスの低下を「失われた30年」と表現することがあります。既存事業を効率的に運営するだけでは、DX時代に取り残されてしまいます。新規事業開発が、ますます重要になっています。正解が分からない状況では、まず仮説をつくり、データでそれを検証し、次々に更新するほかはありません。これにともなって、仮説検証のプロセスを効率化するマネジメント・コントロールが、必要になっています。
経営学部