研究

法学部八木敬二

集合的な紛争解決と民事手続

民事手続法

 民事手続法Ⅰ(民事訴訟法)を中心に、民事手続法Ⅱ(民事執行・保全法)(2021年度)、裁判外紛争解決手続(ADR)(2022年度以降)などの授業を担当しています。この他に倒産(処理)法などを加えた法律群を指して民事手続法と総称されることも多いです。このように総称されるのは、各手続の特徴に応じた規律が各法律で用意され、相互の役割分担が期待される民事手続法の一つの特徴を示しているといえるでしょう。そのため、類似した手続の比較・参照は制度の理解を深めるのに有意義で、私の現在の研究内容も、そのような視点からやや特殊な民事手続について検討するものとなっています。

消費者裁判手続特例法

 これまでは、集合的な紛争解決と民事(裁判)手続に関する研究を進めてきました。具体的には、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(一般に消費者裁判手続特例法と略称されます。)という比較的最近の法律によって創設された2段階型と称される手続について、主にドイツ法・フランス法を参照し、どのような手続的意義があり、どのような発展性が認められるか、といった点を検討しました。この手続は、(少額多数又は)同種多数の被害が生じたときに紛争を実効的・効率的に解決するための新たな途を拓くものであり、社会的な注目を集めた東京医科大学入試差別事件などで活用されています。実験立法的な側面もあって、なお改善の余地などが残されてはいますけれども、より多くの事例に活用され、被害救済が促進される未来に期待が寄せられています。

民事手続とIT化

 昨今の情勢下において、ITの利活用は世の重大な関心事です。民事手続法の分野でも、従前からIT化が議論の対象となっていて、2021年9月現在、法制審議会にて具体的な立法案が検討されている最中にあります。民事裁判手続のIT化を主目的とする法案の関心とはやや異なりますが、集合的な紛争解決という観点からは、裁判所に持ち込まれる前の紛争についてオンラインで(個別にはもちろん)集合的に解決(案を提示)するADRとしての機能も注目されます。このADRは、特にeコマースなどに関する紛争の発生が不可避であったとしても、その解決を容易にすることで関係人のリスクを低減させるとの効果を有し得るでしょう。ODR(Online Dispute Resolution)の一部を成すこの手続のあり方に関して、成蹊大学未来法学研究所が成蹊大学Society 5.0研究所の助成を得て実施する「判断・決定の無人化」研究プロジェクトの一環としての研究を予定しています。

Profile

法学部

八木敬二

専門分野
民事訴訟法
担当授業
民事手続法Ⅰ、裁判外紛争解決手続

各学部サイトでは学部・学科の基本情報の他、教員と学生の距離が近いことを特色とする少人数のゼミ・研究室の様子を知ることができるコンテンツなど様々な情報発信を行っています。