経営学部浜松翔平
私はものづくり中小企業のグローバル経営を研究しています。主に部品や機械等といった生産財を扱う中小企業を対象にしています。日本企業の全企業数のうち、99.7%は中小企業だと言われていますが、国際経営分野では主に大規模多国籍企業のグローバル経営に焦点を当てた研究が多く、日本の中小企業の国際経営に着目した研究はこれまでほとんどありませんでした。
中小企業の海外進出の動機は様々ですが、必ずしも国内生産を縮小させて海外で生産するというわけではありません。海外で生産を拡大しつつ、企業全体での成長を目指しています。海外展開することによって、日本国内でも優位に立つことができるため、海外へと事業を拡げるパターンがよく見られます。
また、中小企業は大企業に比べて、経営資源面では制約があります。そのような状況下で海外進出を成功させるためには、不確実性を減らしていくことが重要です。最初から全く新しい製品を作って全く新しい顧客へ販売するのではなく、まず国内と同じ製品を現地で生産し、現地で展開している日系企業に販売することからスタートすることで、進出当初の不確実性を減らすことができます。日本企業としてそれまで蓄積してきた取引ネットワークが海外での成長において最初の武器となることも見えてきました。現地に展開する日本企業とまず取引を行うことで、事業の幅が広がり、国内市場においても成長することができるのです。
タイ・オオタテクノパークに所在する「Nishii Fine Press (Thailand)(西居製作所)」の生産現場でのフィールドワーク時の写真。
私の研究スタイルとしては、政府統計などのマクロデータ分析とともに、海外展開をしている中小企業にフィールドワークを実施する定性的研究を行っています。
これまで、東南アジアを中心に10か国ほどフィールドワークを行ってきました。海外でのフィールドワークでは時には思わぬハプニングに見舞われることもありますが、調査に協力してくださった多くの中小企業の経営者の方々のおかげで、研究を続けることができています。学術的な貢献はもちろんのこと、調査等でお世話になった方々のためにも経営の現場や日本企業にとって役に立つような新たな理論構築に寄与したいと考えています。
また、現在は個人や家庭で消費される消費財、特に日本酒のグローバル展開の研究も進めています。日本酒産業は、ほぼ全ての企業が中小企業であり、また、日本固有の文化的製品であるため、グローバル展開には困難が多いものです。しかし、日本以外の海外での日本酒の生産・消費は一貫して増え続けています。このような消費財を扱う中小企業のグローバル経営に関する研究成果と統合することで、更なる学術的・実務的な貢献ができればと思います。
「Nishii Fine Press(Thailand)(西居製作所)」でのフィールドワーク後の写真。社長の西居広和さんと奥様の西居パッチャリンさんとともに。
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