経営学部鷹岡澄子
企業のESG活動への取組は、以前から欧州では高い関心を集めており、日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年に国連責任投資原則(UNPRI)の署名機関となったことにより、急速に注目度が高まりました。今では、欧州・日本のみならず、世界的に注目を集めています。更に、世界的なCOVID-19感染流行によって、グリーンの環境だけでなく、広く社会的問題が重要視されるようになりました。
ESGとは何なのか簡単に説明をしますと、環境(Environmental)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字から作られた言葉です。持続可能な世界の実現のためには、企業のESGへの取り組みは不可欠であると同時に、企業の価値向上や持続的成長のためにも企業のESGへの取り組みが必要です。そして、投資先企業のESGへの取り組みを考慮してESG投資が行われることになります。
企業のクレジット・リスクとはデフォルト・リスクとも言われ、債務者が債権を履行できなくなるリスクです。企業が市場性資金調達を行う際には、その企業のクレジット・リスクが市場で重視されます。つまり、クレジット・リスクの高い企業は資金調達コストが高くなります。逆に、クレジット・リスクの低い企業は低いコストで資金調達が可能となります。
私が行っている個人・共同研究では、社債やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のデータを用いて、クレジット・リスクに関する分析を行っています。一般的には、信用格付によってクレジット・リスクが評価されますが、信用格付で全てが説明できるわけではありません。
個人・共同研究では、環境(E)と社会(S)、とりわけ環境ではCO2排出量、社会では労働を分析対象として、クレジット・リスクとの関連性を示しています。具体的な社会(S)に関する研究では、企業の労働環境を取り上げ、従業員口コミサイトからのデータを利用して、従業員満足度が高ければ高いほどクレジット・リスクは下がるのか、検証しています。従業員満足度を向上させるために処遇を改善することが望まれますが、企業にとって、人件費は大きな支出となり、財務的リスクを高める結果になりかねません。分析結果では、産業による違いが検出され、既存研究の理論仮説とも整合性があります。
海外の大学などに所属する研究者たちとも、研究結果について意見交換を行いながら、今後、一層研究を深めていくことで、少しでも関連する研究分野に貢献できるよう取り組んでいます。
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