経営学部田原麗衣
私たちの体内には、脂質やたんぱく質を酸化する作用を持つ「活性酸素種」と、体内で発生した活性酸素種を打ち消す作用を持つ「抗酸化物質」の両方が存在しています。活性酸素種の産生(酸化ストレス度)と活性酸素種を除去する抗酸化力とのバランスによって体内の酸化ストレス状態が決定されることから、活性酸素種が多く発生している状態は良い状態とはいえません。近年、活性酸素種とさまざまな疾患との関係が明白になっており、これらが関与しない病態は存在しないとまで言われています。
運動時には、体内に取り込む酸素の量が10~15倍に達し、活動している筋組織に多くの酸素が運ばれることから、活性酸素種の発生量が増加すると考えられます。この活性酸素種の増加により、酸化ストレス度と抗酸化力のバランスに不均衡が生じます。さらに、酸化ストレスが筋疲労や疲労からの回復遅延を招き、コンディションの低下に影響を与える一要因となると考えられています。
アスリートは日々厳しいトレーニングを継続しなければ高い競技力を維持できませんが、一方で、良いコンディションで試合に臨めるように準備をしなければなりません。酸化ストレス指標の特性や筋疲労との関係性が明らかになれば、疲労を予測するコンディション指標として活用できると考えています。
(写真:酸化ストレス度および抗酸化力の測定)
これまでの研究から、一過性の高強度有酸素運動により酸化ストレス度が増加することを確認していましたが、アスリートのように運動を日常的に行っている場合に酸化ストレス指標がどのように適応するかは明らかになっていません。また、これらの影響には競技種目による違いがあるのかどうかも不明です。そこで、運動が酸化ストレス指標に及ぼす影響を検討しています。この関係性が明らかになると、酸化ストレス指標を活用する際に、競技特性等を考慮してコンディションを評価できるようになると考えられます。
運動によって増加する酸化ストレス度に対応するために、抗酸化作用を高めるサプリメントを摂取する方策が考えられます。サプリメントを摂取すると酸化ストレス指標がどのように変化するか、また、その際に筋疲労やその後の回復にどのような影響があるかを検討しています。激しいトレーニングによる筋へのダメージが大きくなり過ぎないよう、疲労を軽減したり疲労からの回復を早めたりする効果が認められれば、コンディショニングにおける一つのアプローチとして有益な情報となります。
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