研究

理工学部鈴木誠一

見えないものを見る

病原体を見る

 コロナウィルスの蔓延は世界中を混乱に落とし入れました。どこから侵入するかわからない見えない敵に対して理性的に対応することは難しく、様々な憶測が飛び交いました。もしウィルスが目に見えたなら、我々はそれほど怯えなくて済んだのではないでしょうか?髪の毛の太さの1000分の1、電子顕微鏡でなければ写せないウィルスを、我々は直接目で見ることは出来ません。でも分子の回転運動を光で捉える蛍光異方性測定法、この技術を使えばウィルス粒子を一瞬で検出することができます。ウィルスの存在を光の信号に変え、目に見える形にすることで病原体を検出します。病院に行かなくても、空港で、港で、その場で何の病気か診断できる。そんな未来のバイオセンサーを目指して研究しています。

(蛍光異方性測定用光学系)

音で見る

 ある日突然目が見えなくなったら、どんな生活になるのだろう。そんなうっすらとした怯えが私にはあります。糖尿病、緑内障、網膜色素変性症・・・様々な目の病気は誰にでも起こり得ます。その時、自分はどうするのか想像が出来ません。しかし、健常者からすれば大きな不便と危険を乗り越えて、堂々と生活する人たちがいます。そんな人達を科学の力で少しでも補助できないだろうか。今の電子情報技術を使えば、身の回りの景色を音に変えて知らせることができるはず。でも、すべての情報を音に変えればよいわけではありません。もともと人の脳は複雑な情報処理で取捨選択をしています。情報が多すぎれば混乱するだけです。人の特性を考えて、本当に人に寄り添うことのできる技術を作るための研究を続けています。

(画像を音声変換する装置を装着した様子)

炭素の流れを見る

 植物は二酸化炭素を吸収してくれて、環境に良いんだからじゃんじゃん木を植えよう。そんな浅はかな考えから始まった植林研究です。けれど研究を進める中で、人が、木が、土地が、無計画な植林が如何に無意味であるかを教えてくれました。成長し切った木は二酸化炭素をほとんど吸収しません。成長が速すぎると土地を痩せさせ、畑だった土地でさえも不毛の荒れ地に変えてしまいます。人間も木も、地球という生態系の中で助け合って暮らす生き物の1つです。木が吸収した二酸化炭素は、土に、動物に、木材に、空気に変わり、さらに次々と形態を変化させて、自然の中を流れていきます。その流れを読み取って、長く炭素が保持できる土に有機物として蓄積することで、大気中の二酸化炭素をこっそりと減らしていきます。

(桐植林地の写真)

Profile

理工学部

鈴木誠一

専門分野
医用工学
担当授業
生物学概論、化学数学、サイエンスプログラミング、生物資源工学

各学部サイトでは学部・学科の基本情報の他、教員と学生の距離が近いことを特色とする少人数のゼミ・研究室の様子を知ることができるコンテンツなど様々な情報発信を行っています。