2018年06月18日
左から: 吉積 たまき さん(法学部政治学科4年) 西山 隆行 教授(法学部教授)
清水 美輝 さん(法学部政治学科4年) 黒山 幹太さん(法学部政治学科4年)
西山 隆行 教授
――まず、西山ゼミの普段の活動内容について教えていただけますか。
西山:アメリカ政治について学ぶ、というのが大きなテーマです。基本的には一話完結型で、大統領制や銃規制、人工妊娠中絶、人種問題などについて考えます。大統領選挙や連邦議会選挙があるときなどは、もちろん時事問題も素材として扱います。私が解説をする場面もありますが、学生同士で自由に討論する場面の方が多いですね。
清水 美輝 さん
――学生の皆さんは、なぜ西山ゼミを志望したのでしょうか。
清水:2年生の時、西山先生のゼミのシラバスを見て、絶対ここに入りたい!と思いました。先生のシラバスには、「正義と倫理」というテーマで、大麻や人工妊娠中絶など、日米で捉え方が異なる問題や正解がないような問題を扱うと書かれていて、とても面白そうだと思いました。また、自分の好きなゼミだったらのびのび発言できてきっと楽しいと思って、志望しました。
吉積:私はもともと国際関係に興味があり、先生のゼミを志望しました。海外の政治について知りたいという気持ちが強かったので。
黒山:僕の場合は、2016年のアメリカ大統領選挙がきっかけでした。日本政治にも興味はありましたが、アメリカ政治も面白いなって。先生には1年生のときからゼミでお世話になっていましたし、先生の明るくて面白いお人柄にひかれた、というのもありますね。
――みなさんはいつごろから政治、あるいは政治学に興味を持ったのでしょうか。
吉積 たまき さん
吉積:大学受験の勉強をしている時に、興味を持ち始めました。自分は世界史を選択していたのですが、どこの国でも、政治がほんの少し変わっただけで、すごく多くの人々が影響をうける。それが面白くて、政治について勉強したいと思いました。
黒山:「郵政解散」って昔ありましたよね。ある議員が自分の所属している党に造反を起こし、与党内で分裂が起きた。あの時、何故かはわからないんですが、政治って面白いと思ったんです。その後、国際関係や世界の政治に興味を持ち、現在に至ります。
――「郵政解散」って、黒山さんが小学生くらいのときでは...?
黒山 幹太 さん
黒山:変わってたんですかね。(笑)
――清水さんはいかがですか?
清水:私は高校生の時に読んだ国語の教科書がきっかけでした。「主張しなければ権利は声を発しない」という言葉がその教科書にあって、すごく納得したのを覚えています。そして、権利について定めている法律とか、社会のベースとなるところに興味があるということがだんだんとわかってきました。なので、法律を作る過程やシステムを勉強したいと思い、政治学科に入りました。
――国語の教科書から政治に興味を持つというのはすごいですね。
西山:成蹊大学にはそういう学生が多いと思います。思いがけないことをきっかけとしてある分野に興味を持ち、それを掘り下げる。これはたくさんの物事に興味を持っているからこそできることで、素晴らしい事だと思います。
――今回、『アメリカ政治講義』を出版することになった経緯を教えてください。
西山:2016年のアメリカ大統領選挙以降、私の専門分野であるアメリカ政治について、メディア関係者など多くの方々から取材や質問を受ける機会が増えました。その中で感じていたのが、アメリカ政治の基本的な事柄が実はあまり知られていないということでした。「日本の政治はこうだから、アメリカの政治もこうなんだろう。」と思い込んでいる人も多いのです。それで、複雑な話よりもまずは基本的なことを解説する機会が必要だと考え、今回の出版に至りました。
――なぜ学生と共著というかたちになったのでしょうか?また、その意義を教えてください。
西山:私のゼミでは、討論の議事録を学生たちに作成してもらっています。その議事録を見ると、「こう思っていたけど、実は誤解であった。」など、気づきのコメントがたくさん入っていました。例えば、アメリカの政党でも大統領が出した方針に基づいて党議拘束がかけられると思っていた、とか、アメリカの州政府は日本の都道府県と同じような位置づけだと思っていた、とかいうことです。
特に、今回協力してもらったこの3人は、多くの人が当然として考えているけれど、本当かどうかは怪しいような前提について、疑問を呈することができる学生たちです。それなら、彼らが思い浮かべる素朴な疑問を本書の中枢に据えれば、きっと多くの人にとって、アメリカ政治を基礎からしっかり理解できるような本になると思い、彼らに協力を仰ぐことにしました。こういった本に学生たちの目線が入るということは珍しいですよね。
読者の方々にとっても、曖昧な前提をそのままにしないで読めるかと思いますので、学生に協力してもらったことに大きな意義があると思います。
――学生ならではの目線も取り込んだということですね。学生は具体的にどのような関わり方をしたのでしょうか?
西山:まず、本書の「はじめに」で挙げたような課題について共に考え、その中で各章の内容を決めていきました。次に、その課題について私が解説をし、彼らが納得できない点をどんどん指摘してもらい、中身を固めていきました。分からないことに対して、まっすぐぶつかってくれる彼らですから、疑問や指摘をたくさん出してくれました。おかげでわかりやすい内容になったと思います。
――制作の過程で、学生の取り組み具合はいかがでしたか?
西山:みなさんそれぞれの持ち味を発揮し、大いに貢献してくれました。清水さんは、普通の人は前提条件として片づけてしまうような事柄を、しっかりと見極めて、「本当にその前提は正しいのか?」という問題を提起してくれます。黒山さんはストレートに、問題の本質を見極めて意見をどんどんだしてくれる人。吉積さんは、なるほどその視点もあるな、と独自の切り口から問題提起をしてくれました。
――素晴らしいチームですね。学生の皆さんは実際に制作に関わってみていかがでしたか?
黒山:自分たちが頭を捻って考えたものが、書籍という形になるというのはうれしかったです。普通は自分たちが考えた意見とかは、ゼミ内や、学内で終わってしまう。でも、書籍として出版されることで、大勢の人に読んでもらえます。新書を教材として使う大学も多いです。それを制作する立場を経験できたことはすごく貴重だと思っています。
吉積:書店や図書館で今回の書籍が並んでいるのを見つけると「おっ」と反応しちゃいますね。書籍の制作に関わるなんてなかなかないので、自分たちが学び考えたことが可視化されるのは、少し恥ずかしいですが嬉しいです。
清水:今回共著というお話をいただき、自分の学びや努力してきたことが認められた感じがして、とてもうれしかったです。実は、私は大学の授業に対して、静かに先生の講義を聞いて、発言する機会はめったにない、というイメージを持っていました。でも、先生のゼミはまるで違った。どんどん発言して、それが認められる雰囲気があるんです。だから、西山先生のゼミに入って以来、ゼミや大学生活のイメージががらっと変わりました。4年間頑張ってきたことの成果が記録として残って嬉しいです。
――成蹊大学の学生にメッセージをお願いいたします。
西山:成蹊大学の学生は、すごく優秀です。だけど、素晴らしいアイデアを持っているにもかかわらず、それを外に出せない学生が多い印象があります。どんなに優れた意見やアイデアでも、表明しなければ、表明された別の声に負けてしまいます。だから、もっと自分たちの能力と可能性を信じて、堂々と意見を出してほしい。成蹊大学の学生は、組織であれ社会であれ、中核を担う人材だと思います。それぞれの素晴らしい能力を活かして、世の中をけん引してほしいです。
――学生の皆さんの今後の夢や目標を教えてください。
黒山:私は来年から、新聞記者になります。先生から「当然とされていることを問題として提起できる」と評価していただいたので、そこを大切にしながらも、アンテナを広く張って、世の中の読者の疑問を解消できる新聞記者としてがんばっていきたいと思います。
清水:広い視野と当事者意識を持ちながら、社会に貢献していきたいです。
吉積:大学進学を決めたときから、大学4年間も含めて、専門、専門外問わずとても多くのことを学びました。これからも、その知る喜びや、未知なものへの素直な関心を持ち続けて、成長していきたいと思います。
――本日はどうもありがとうございました。
一同:ありがとうございました。