理工学部 戸谷希一郎教授(専門分野:生物有機化学、糖鎖生物学)のグループの「ハイブリッド結合コンセプトに基づくカルレティキュリン標的糖鎖リガンドの開発(Development of a calreticulin-targeting glycan ligand based on a hybrid binding concept)」と題された学術論文が、米国科学誌『Glycobiology』に掲載され、併せて "Editor's Choice" に選ばれました。
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『Glycobiology』は、アメリカ糖鎖生物学会が刊行する糖鎖生物学研究に関する国際学術専門誌で、生化学分野のTop 25%にランクされるQ1ジャーナルです。
戸谷教授のグループは、カルレティキュリンという糖タンパク質の高次構造形成に寄与するレクチン様分子シャペロンの機能解明に取り組んできました。これまでカルレティキュリンの機能を調節するための結合リガンドには、非常に複雑な構造を有する高マンノース型12糖の存在が不可欠だと考えられてきました。
今回の論文では、カルレティキュリンが糖鎖認識ドメインに加えて疎水性認識ドメインを有する点に着目し、単純な3糖と疎水性パッチを適切なリンカーで連結した単純な構造のハイブリッド結合型リガンドを開発しました。あらたに開発した結合リガンドは単純な構造にも関わらず、カルレティキュリンに対する十分な結合能を有することが分かりましたまた、本リガンドはカルレティキュリンの分子シャペロン活性を有効に阻害する薬剤としても利用可能なことを実証しました。
生体内におけるカルレティキュリンの働きは、糖タンパク質の高次構造形成に重要であり、その機能を調節する結合リガンドは、糖タンパク質高次構造形成不全によって引き起こされる糖尿病やアルツハイマー病、パーキンソン病などの疾患研究への活用が期待されています。