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これからのホスピタリティを考える―経営学部と日本航空(JAL)が連携講座を開講

2022年04月08日

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経営学部は成蹊大学の5番目の学部として2020年4月に開設しました。その特徴の一つとして挙げられるのが、経営学の専門的な学びに加えて、企業経営の問題をより広い視点から認識できるように「情報」「国際」「キャリア」の3つの学際領域を学べるにしたことです。今回はその中の「キャリア」に注目。実務家教員や実務経験のある教員による実践的な学修を通じて、現代に役立つ経営学を学ぶ授業の一つ「社会理解実践講義(JAL連携講座:世界を感動させたホスピタリティの極意を学ぶ)」の様子をご紹介します。

■成蹊大学と日本航空(JAL)が初タッグ、一躍人気講義に。

2021年度後期に開講した「社会理解実践講義(JAL連携講座:世界を感動させたホスピタリティの極意を学ぶ)」は、日本航空株式会社の客室乗務員をはじめ複数の講師をお招きし開講する経営学部の新しい試みです。学部の垣根を越えて、全学部から受講生が集まる人気講義となりました。

全学部の2~4年生がグループで課題に取り組む

授業のコーディネータを担当する経営学部 藤田 玲子教授は、今回の連携講座について「ホスピタリティを提供するには、相手のニーズ、つまりは欲していることを察して対応するコミュニケーション力が必要です。それができると人間関係を円滑に進めることができるので、ホスピタリティは経営学にも親和性のある、重要な要素だと考えています。学生には、将来社会に出ることを見据えて、社会にどのように役立っていくかを理解してほしいです」と話します。

■エアラインやホテル、テーマパークなどのケーススタディからホスピタリティを考える

計14回の講座の初回は、講師と50人近い学生全員の1分自己紹介からスタート。2回目からは、エアラインやホテル・旅館、テーマパークなど各業界のホスピタリティやサービスに関する基礎知識を学び、ビジネスモデルやサービスの特性、それぞれの違いについて、学生同士がグループワークで頻繁に話し合いながら理解を深めていきます。


学生たちがとりわけ目を輝かせながら聞いていたのが、パイロットの運航訓練の指導官をお招きした「ホスピタリティを支える安全と、その安全を支えるチカラ」について考える回。
「事故が起きそうな状況でもそれを回避しながら、パイロットがお客様の安全を守る操縦を行うには、どんなチカラが必要か?」という問いかけに、「リーダーシップ力」「操縦士と副操縦士のコミュニケーション力」など、学生たちの議論もヒートアップします。

講師陣の多彩なお話を真剣に聞く学生たち

講師のJAL総合政策センター産学連携部 猪田 京子氏は「ホスピタリティの基盤となるのは“安全”です。ホスピタリティは“おもてなし”や“歓待”などと訳されることが多いですが、実際にはそれ以上の広い意味があります。安全を担保し続ける努力をしたうえで、お客様の期待以上のものを提供するのがホスピタリティ。学生の皆様には、さまざまなケーススタディを通じてそのことを理解してもらいたいです。また、学部や学年が異なる学生同士のグループワークでは、チームワークを高めながら、社会人にとって大事なコミュニケーションの取り方を実践的に会得していってほしいですね。」と語ります。

初めは初対面で緊張していた学生たちも、授業の回を重ねるごとに絆が深まり、各回のワークでは全員で話を展開していくことがこの講義の特徴のひとつ。どのグループからも議論の熱が感じられます。

グループワークでは学部も学年も関係なく、協力して議論を進める

■これからのホスピタリティを考える―グループ発表

講座の後半には、テクノロジーがホスピタリティとどのように関わっているかを考える授業を展開。「AIやITが人間の仕事を侵食するのでは?」「ヒューマンホスピタリティはAIと共存できるの?」といった、変化する現代社会の中でホスピタリティはどう在るべきなのかという問いかけを考えつつ、学生たちは最後のグループ発表に臨みます。


グループ発表のお題は「これからのホスピタリティを考える」。
今後進化し続けるであろうIT、AIと人間が共存しながら、いかに人間にしか発揮できないホスピタリティの強みについて具体的に考える、というものです。


グループワークでは、計11グループのそれぞれから
「環境問題との両立」
「LGBT」
「外国人対応」
「介護」
「食文化・宗教のちがい」
「高速自動化の先にある人と人とのつながり」
など、今後の社会の課題となりそうなワードが聞こえてきます。時代を取り巻く環境の変化が早く、どのような社会になっていくか想像もできない未来の中で、ホスピタリティはどのようになっていくのでしょうか。

■AIに置き代わるもの、人間にしかできないもの

迎えたグループ発表当日。11グループ11通りのアイディアや考えが盛り込まれた発表がされていきます。

発表時間は1グループ3分。タイムマネジメントも発表の重要なポイントとなった。

「私たちはAI介護ホスピタリティの『介護する衛門』を紹介します」
「高齢化問題や訪日外国人の増加問題などの社会背景を前提として、高齢の方や訪日外国人にも優しい渋滞・遅延用アプリ『SUKUTTE』を提案します」
といった、AIと共存したホスピタリティツールを提案するグループ。


「ホテルはチェックインのAI化により、少子高齢化による労働人口の減少問題を解消します。旅館はホテルよりも人との密な関係がある日本の伝統的なホスピタリティの空間なので、チェックインは“人”が、代わりのものをAIが行います」
「2040年のJAL機内のホスピタリティを考えて、3つのロボットの導入を提案します」
といった、業界の特性をふまえた人とAIのサービスの併用を考えるグループ。


また、発表の中で学生からは
「機械などの力を借りながら人間にしか出来ないことを考えるのが私たちのホスピタリティ。」
「文化を伝える努力は人間がする」
「心のこもる接客、人の温かさが大切になる“あいさつ”は人間ならではのホスピタリティ」
といった、人間だからこそできるホスピタリティについての言及もありました。

各グループ発表の後には、講師陣からのフィードバックを受ける

猪田氏からは発表の労いとともに「未来のホスピタリティに明確な答えはなく、社会の在り方とともに私たちが創っていくものです。テクノロジーを上手く活用しながら、心を伝え、笑顔に包まれる温かさを皆さまも提供し続けていってほしいです。」というメッセージが送られました。