2024年09月04日
■「メディア・リテラシー演習B」とは?
文学部現代社会学科が提供する「メディア・リテラシー演習B」は、履修生たちが株式会社エフエムむさしのの協力を得ながらラジオ番組を制作する授業です。制作したラジオ番組は、武蔵野市のコミュニティラジオである「むさしのFM(78.2MHz)」で放送されます。ラジオ番組はインターネットでも同時配信され、全国で聴くことができます。
■今年度のテーマは「東京・武蔵野・吉祥寺の100年」
今年度は「東京・武蔵野・吉祥寺の100年」をテーマに、録音番組2つ、生放送番組1つを制作しました。今から100年前の1924年は、成蹊学園が池袋から吉祥寺に移転した年であり、成蹊学園を創立した中村春二先生が逝去された年でもあります。その前年の1923年には関東大震災が発生していますので、ちょうど東京の復興が始まる年にあたります。また、その翌年の1925年にはラジオ放送が開始されました。
履修生たちは、録音番組では「自然」と「食育」という2つのトピック、生放送番組では「日本語表現」にフォーカスし、東京・武蔵野・吉祥寺においてそれらが100年のあいだにどのように変化していったのか、それらが現在どうなっているのかについて考察して、ラジオ番組を制作しました。
■『武蔵野の緑――これまでの100年これからの100年――』
履修生たちは1つめに「自然」をテーマにした録音番組を制作しました。100年前の武蔵野市は森林があり、田畑が広がり、今とは比べものにならないくらいの自然に恵まれた土地でした。この100年前の1924年、成蹊学園は吉祥寺に移転して、ケヤキを植樹しました。今、ケヤキは武蔵野市のシンボルになっていますが、一方で都市化が進んだことによって昔の武蔵野市の自然は姿を変えつつあります。武蔵野市の自然はどのように変化してきたのでしょうか。履修生たちは、成蹊学園史料館、成蹊学園管財課、成蹊学園サステナビリティ教育研究センター、武蔵野ふるさと歴史館、武蔵野の森を育てる会の方々に取材をして、このことを考えました。
番組を制作した履修生からは、つぎのような声が寄せられました。
「ラジオ番組冒頭に大学内の学生にインタビューをした音声を入れて、学生が作った番組らしさや、新鮮さを感じられるようにしたのがよかったのかなと思いました。その後の番組の流れは、最初は成蹊学園のケヤキ並木に着目して、その後だんだんと武蔵野市の自然へと話題を広げていくというものでした。枠を徐々に広げていくことを意識して作っていたので、そこは成功したのかなと考えました。インタビューをふんだんに取り込んでラジオを聴く人に飽きさせないようにした点も、聞いていて面白いもの、理解しやすいものができてよかったなと思いました」
■『今日の食卓に武蔵野市内産野菜を添えてみませんか?』
履修生たちは2つめに「食育」をテーマにした録音番組を制作しました。100年前の1924年、成蹊学園は今日でいうところの「給食」を開始しました。同年、「三浦屋」が吉祥寺で生まれ、1953年に「給食」事業に乗り出しました。どちらも1954年の学校給食法が制定される前のことです。武蔵野市の「食」をとおした教育はどのように生まれて、どのように続いてきたのでしょうか。履修生たちは、成蹊学園史料館、JA東京むさし、三浦屋の方々に取材をして、この問いの答えを見つけました。
番組を制作した履修生からは、つぎのようなコメントが出されました。
「「食」と「教育」という武蔵野市民の関心が高い領域についてのラジオ番組は、武蔵野市民の皆さんに興味を持ってもらいやすかったのではないかと思います。インターネットで調べただけでは見えてこないような話も盛り込んだことで、今回こうしてラジオ番組を制作した意味があったのではないかと思います」
■『学長と語る! 教育と日本語の100年』
履修生たちは3つめに成蹊大学の森雄一学長をゲストにお招きして、「日本語表現」に焦点を当てた生放送番組を制作しました。1924年に成蹊学園が吉祥寺に移転したころ、文学者たちも武蔵野地域に魅了され、武蔵野地域を描写した作品を生み出していました。1901年、国木田独歩は『武蔵野』を刊行し、武蔵野地域の森林の美を称賛しました。成蹊学園も文学者たちも武蔵野地域になぜ魅了され、どのような教育、日本語表現を生み出したのでしょうか。また、100年後、大学、および、日本語表現はどうなるのでしょうか。日本語学がご専門で、成蹊大学の学長である森雄一先生をゲストにお招きし、教育、日本語表現の100年について考えました。
番組を制作した履修生からはつぎのような意見が寄せられました。
「日本語を母国語として使っていますが、「日本語学」として真剣に向き合ったことがなかったので、専門のお話をたくさんお聞きできたことが面白かったです。文学部卒の母親が、私が武蔵野地域に住むことになったときにとても嬉しそうにしていたので、武蔵野地域が文学者に好まれる土地だということはなんとなく知っていたのですが、中央線文化として100年とは言わずとも長い年月をかけて人と共に成長し、愛されてきた土地なのだと知り、ますます武蔵野地域に愛着が湧きました」
■履修生たちの声
履修生たちはラジオ番組制作をとおしてどのようなことを学んだのでしょうか。寄せられた声を紹介します。
「この番組を通して、集めてきたデータの中から特に伝えたいところ、伝えるべきところを選択する力が養われたと思います。初めは18分間の番組はとても長いと思っていましたが、いざインタビューを終えて番組の編集に取りかかると、あれもこれも使いたくなってしまい、時間が足りないということがとても多くありました。録音番組の制作では、「自分は何を伝えたかったのか」「伝えたいことを一番効果的に表現できる方法は何か」を考える練習ができたと思います」
「むさしのFMのスタジオにお邪魔させてもらえたことが、単純に嬉しかったです。もともとラジオが好きでこの授業を履修したので、スタジオに行って実際に使われている機材やラジオブースを見学させてもらえることなんて、普通に生活していたらなかなかできない体験だったと思うので、この授業ならではのことですし、貴重な経験をすることができて嬉しかったです。それに、沢山の方にインタビューさせていただいたことも楽しかったです。事前の準備が大変で、インタビュー当日も緊張しましたが、さまざまな大人の方にインタビューすることなんて、これもまたそうそうないことなので、終わった今となっては楽しい思い出だったなと思います」
「授業の中で、アナウンサー演習が印象に残っています。アナウンサーの方から実際に指導していただいたことで、プロの目線で見る「喋り」を感じることができて面白かったです。アナウンサーの方の「後の世代に繋いでいくために正しい言葉遣いを知ることが大切である」というお話が印象に残っています」
「ラジオ制作をして楽しかった点は、履修生の皆さんと編集したことです。インタビュー音声が集まって、番組に入れ込みたいことがたくさんあるなか、どの音声を選ぶかを皆さんと考えたことはとても楽しかったできごとでした。達成感を持ったのは、ラジオ番組を放送し、よかったよと周囲から褒められたときです。実際にむさしのFMで放送されたのを聞いて、やり切ったなと思いました。また、家族や友人からよかったよと褒められたときに達成感を感じました」
■履修生たちからのメッセージ
最後に、履修生たちから在学生の皆さん、在学生の皆さんへのメッセージを掲載したいと思います。
「自分たちでラジオ番組を作ってみたり、実際のむさしのFMのスタジオにお邪魔したりするなど、この授業でしかできない経験をとおして、ラジオというメディアに関して考えが大きく変化し、座学だけでは得ることのできない学びをたくさん得ることができました。最初は「珍しい授業があるな」という好奇心で参加を決めたのですが、授業を終えて振り返った今、この授業に参加してよかったと思っています」
「結論からお話しますと、メディア・リテラシー演習の概要を見て少しでも興味をもった方は、絶対に参加したほうがよいと自信をもって言えます。この授業は一方的に講義を聞くのではなく、自分の目で、自分の足で学んでいく実践型の授業です。実践型というと一人ひとりの負担が重そうに聞こえてしまうかもしれませんが、頑張れば頑張るほどラジオ番組を作り上げたときの達成感は大きいと思います。また、むさしのFMのスタジオの見学ができたり、プロのアナウンサーさんの指導が受けられたりするなど、普通はなかなかできないような体験を授業内ですることができます。大学の授業を楽しみたい方にはとてもおすすめできる授業です」
「ラジオ番組制作の裏側だけではなく、ラジオがもつ地域とのかかわり、人との繋がりまで学ぶことができます! 他の授業ではできません!」
「この授業では、普通の大学生活では得られないさまざまな経験を得ることができます。むさしのFMのスタジオを見学させてもらったり、いろいろな方にインタビューをしてお話を聞いたり、他学年の人たちと協力し合ったり、パソコンで音声の編集作業をしてみたりするなど、この授業でしかできない体験がたくさん待っています。授業内はもちろん、授業外の準備や活動が多いのですが、そのぶんラジオ番組完成の瞬間や放送時の達成感は大きなものがあります。少しでも興味があれば、ぜひ参加してみてください」
「メディア・リテラシー演習では、「制作者の視点」や「人との繋がり」を得られます。実際に履修生とテーマをじっくり考えたり、取材をしたり、グループで音声の編集や原稿の作成をしたりするなど、貴重な体験をすることができます。リスナー側では見えない現実を多く知ることができるはずです。また、取材で多くの方と繋がりができ、さまざまなことを知るでしょう。授業外で集まって作業することも多く、大変だと感じる部分もあると思いますが、ラジオ番組が完成し放送できたときには、達成感とともに周囲への感謝を強く感じるはずです。履修してよかったと思える授業なので、成蹊大学に入った場合は、ぜひ履修を検討してみてください」