2025年09月01日
理工学部 戸谷希一郎教授のグループに所属する廣瀬光了助教は、静岡大学の田代啓悟助教との共同研究により、「CH-π安定化"イオタマー" を介した最小グルコース-ピレン系における水素結合繊維の段階的自己組織化 Stepwise self-organization of hydrogen-bonded fibers in a minimalist glucose-pyrene system via CH-π-stabilized "iotamers"」と題した学術論文を発表し、英国科学誌『Chemical Communications』に掲載されました。本論文は特にその学術的独創性とビジュアルインパクトが評価され、同誌の "Inside Front Cover" にも選出されています。
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『Chemical Communications』は、化学分野全般を対象としたハイインパクトな速報誌であり、特に有機化学分野においては上位25%に位置するQ1ジャーナルとして国際的にも高く評価されています。
戸谷教授のグループは、本研究では、糖鎖の自己組織化が生命現象において機能性発現の鍵となることに着目し、糖骨格を有する芳香族分子を用いた新たな自己組織化戦略が提案されました。研究チームは、D-グルコースとピレンを連結した簡素な分子を設計・合成し、有機溶媒中においてCH-π相互作用を駆動力とした分子集合体の形成に成功しました。これは、従来の水素結合に依存した分子集合とは異なるアプローチであり、自己組織化の新たな可能性を示すものです。CH-π相互作用によって形成された初期集合体が、水素結合を主因とする繊維状構造へと段階的に自己組織化するプロセスを詳細に解析しました。この過程において、わずか2〜4分子から成る小規模な集合ユニット(本研究では「イオタマー(iotamer)」と命名)が重要な中間体として機能することを明らかにしました。
この成果は、分子集合体設計における新たな指針を提供するとともに、糖(鎖)を基盤とした機能性材料開発への応用展開が期待されます。今後、生体模倣材料や刺激応答性ナノ構造体への応用も視野に、さらなる研究の進展が望まれます。
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