経済学部 鈴木史馬教授(専門分野:マクロ経済学)の論文 「Asset fire sales in an incomplete market economy」 が、国際学術誌『Journal of Financial Stability』に掲載されました。同誌は、金融危機、安定性、および規制に関する研究を扱う学術誌です。
この論文の概要は以下の通りです。
世界金融危機では、金融機関による資産の投げ売り(fire sale)と、それに伴う市場の流動性枯渇が大きな問題となりました。本論文では、このような市場型金融危機がなぜ発生するのかを、市場全体の相互作用を考慮した理論モデル(一般均衡モデル)を用いて分析しました。
本研究では、家計が十分な保険市場を利用できず、個別的な所得リスクに直面している状況を考えます。このような環境では、金融機関は安全資産を発行して資金を集め、それを株式などのリスク資産へ投資することで利益を得ようとします。しかし、金融機関は担保規制(マージン規制)によって過度な借入を制限されています。そのため、不況によって金融機関の保有資産の価値が低下すると、債務返済のためにさらに資産を売却せざるを得なくなり、その売却が資産価格をさらに押し下げてしまいます。これが fire sale と呼ばれる現象です。
分析の結果、金融規制には重要なトレードオフがあることが分かりました。規制を緩和すると、金融機関による安全資産供給が増え、家計は所得低下に備えた貯蓄を行いやすくなります。しかしその一方で、危機時には資産価格の下落が生じ、金融機関による安全資産供給が縮小することで、市場の流動性が枯渇する可能性があります。本研究は、金融市場の安定性と家計のリスク分散をどのように両立させるべきかについて、新たな理論的視点を提供するものです。
論文はこちらからご覧いただけます(外部リンク ※英語サイト, オープンアクセス)