法学部原昌登
パワーハラスメント(パワハラ)や、セクシュアルハラスメント(セクハラ)という言葉、きっとお聞きになったことがあると思います。○○ハラという言葉は、日々増えているようにも感じられます。
こうしたハラスメント(harassment)は、ひと言でいえば、相手の人格を傷付ける発言や行動です。ハラスメントが起きないのが一番ですが、人が集まる場所、特に多くの人々が毎日を過ごす「職場」では、どうしてもパワハラやセクハラが起きてしまいます。
それを防ぐためには、心理学、医学、経済学など、さまざまな学問分野からのアプローチが考えられます。私は「法学(法律学)」の観点から、ハラスメントを防ぐためにはどういう法制度が望ましいのかを研究しています。
ハラスメントを防ぎたいといっても、話は簡単ではありません。お互いを尊重し合う気持ちをもつことが重要なのですが、それを法律で強制するのは無理があります。そこで、日本の法律では、パワハラなど一定の類型のハラスメントについて、企業等に対し「防止措置」を義務付けています。
具体的には、「うちの会社ではハラスメントは禁止」といった方針(ルール)を定めることや、相談窓口を設置して被害者からの相談に応じること、ハラスメントが発生した際には事実関係を確認し、加害者を処分するといったことなどが、法律上の義務とされています。企業が防止措置を行うことを通して、ハラスメントのない職場を目指すのが、日本の法制度の特徴です。
上では「一定の類型」と書きましたが、法律でカバーされない新たな類型も出てきています。例えば、客が店員を怒鳴るなどのカスタマーハラスメント(カスハラ)が、近年、社会問題になっています。
そこで、2025年に法律が改正されて、カスハラも防止措置の対象に加わることになりました。私は国会(衆議院厚生労働委員会)に参考人として呼ばれ、この改正について意見を述べてきました。法律学の教員は、学んだこと(研究内容)を論文や本にまとめること、学生の皆さんにわかりやすく授業をすることはもちろんですが、研究で得た専門的な知識を実際の立法や法改正に活かしていくことも重要な役割だと私は思います。皆さんが学ぶ教室は、まさに社会とつながっています。その教室で皆さんとともに学べる日を楽しみに、私も研究に取り組んでいきます。
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