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AI時代に、なぜ外国語を学ぶのか――ことば・経験・キャリア

2026年10月30日

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AIが人間に代わってできることが増えるほど、私たちは何を学び、どのような経験を重ねるべきなのでしょうか。

2026年10月、文学部英語英米文学科の「セミナー600」(担当:八木橋宏勇教授)に、AI英会話アプリ「ELSA」を手掛けるELSA Japan合同会社(以下、ELSA Japan)の髙橋一也先生をゲストスピーカーとしてお迎えしました。髙橋先生は、中高の英語教諭や教頭を務め、レゴブロックを使った授業の考案やPBL(Project-Based Learning、問題解決学習)やアクティブ・ラーニングを導入するなど新たな授業スタイルの実践で話題となり、2016年には"教育のノーベル賞"とも呼ばれる「グローバル・ティーチャー賞」のトップ10に日本人として初めて選出された先生です。現在はELSA Japanで教育分野の責任者を務め、教育現場での経験とテクノロジーを結びつける取り組みを進めています。

当日は八木橋ゼミに所属する3年生11名が参加し、「AI時代に、なぜ外国語を学ぶのか」をテーマに、ことばを学ぶ意味と自分自身の将来について考えました。「髙橋先生の話を聞いてみたい」というゼミ生の声から実現した今回の講義の様子を、レポートします。

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世界の動きを、自分の学びにつなげる

なぜ、日経新聞を読む必要があるのか。講義ではまず、企業の売却をめぐる報道や事業展開を例に、企業の動向から社会の変化を読み取り、自分の学びや進路と結びつけて考える視点が示されました。


自分の関心のある分野だけでなく、世界で何が起きているのかにも目を向ける―学生からは「ことばで何を伝えるかを大事にし、世界がどのように動いているのかも積極的に学んでいきたい」という感想が寄せられました。


また、昨今の英語教育における新たな取り組みとして、英・サンフランシスコ発で全世界ユーザー数が9,000万人を超えるAI英会話アプリ「ELSA」やマンガ英語多読アプリ「Langaku(ランガク)」も紹介されました。ELSA Japanと「Langaku」を運営するMantra株式会社が共同開発した学校向けプログラムでは、マンガを英語で読む楽しさと、登場人物のセリフを声に出して表現するAI発音コーチングを組み合わせています。作品への興味を、英語に触れ、自分の声で表現する機会につなげる取り組みで、学生も強い関心を示していました。

「通じなかった」経験は、学びにどうつながるのか

テクノロジーの活用だけでなく、人と直接関わる経験も、今回の講義の重要なテーマでした。サウナの流行という身近な話題を入り口に、人と同じ場を共有し、直接つながることの価値へと話が広がりました。


「ことばが通じなかった経験は、次の学びにどうつながるのだろうか。」―高橋先生からは、そうした経験と学習の動機づけとの関係や、単語・文法の知識を音声や実際の使用場面と結びつける大切さが紹介されました。他者と関わり、社会的な実践に参加する過程として学びを捉える「状況的学習」の視点も、ことばの習得を考える手がかりとなりました。


参加した学生は「英語学習では正しい知識を覚えることだけでなく、間違えたり、実際に使ってみたりする経験から得られるモチベーションのお話が印象的でした」と振り返っています。また、自分自身の身体を通して経験を積むことの大切さが印象に残ったという感想も寄せられました。

ことばや道具は、どこまで自分の一部なのか

講義では、ことばを学ぶ意義を哲学的に考えるために、「インガとオットー」の思考実験も取り上げられました。

例えば、自分の記憶を頼りに美術館へ向かうインガと、記憶を補うためにいつも持ち歩いているノートを頼りに、同じ場所へ向かうオットー。この対比は、日常的に使う道具を、記憶や思考の働きの一部として捉えられるかを問うものです。この例を手がかりに、ことばも単なる伝達の道具ではなく、自分自身の一部と考えられるのかという問いへと話が広がりました。


さらに、感情の存在を感じさせる抑揚や語り口を生成できる音声AI「Eleven labs」の紹介動画も取り上げられました。この動画を手がかりに、AIには感情がないと言い切れるのかという問いが提示され、私たちが感情や人間らしさをどのように捉えているのかについて考えました。


AIに何ができるのかを知ることから、人間が何を経験するべきなのかを問い直すことへ。―技術の可能性に触れながら、外国語を学ぶ意義を、人間の心や経験のあり方から考える時間となりました。

学びを、卒業研究とこれからの選択へ

講義では最後に、将来の可能性を早い段階で狭めず、社会の変化に目を向けながら、戦略的に学びや進路を選ぶ大切さも語られました。


卒業研究や就職活動に取り組む3年生にとって、今回の話題は、自分自身の課題を見つめ直すきっかけにもなりました。“言葉がどのように現実世界の意味を持つのか”という記号接地問題に関心を持つ学生は、「言葉の習得という観点からも刺激的なお話を多く頂き、新しい視点から自身の卒業論文の内容をさらに深掘りしたくなりました」と述べています。また、自分がやりたいことと社会で必要とされることの双方を考え、就職活動に生かしたいという声も寄せられました。


外国語を学ぶ理由を問い直すことは、自分が誰と関わり、何を経験し、どのように生きていきたいのかを考えることにもつながります。身近な話題から社会や哲学の問題へと視野を広げた今回の授業は、学生たちが日々の学習、卒業研究、将来の選択を結びつけ、自分自身の学びの意味を考える機会となりました。


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