2026年10月01日

成蹊大学(東京都武蔵野市)では、2026年4月に国際共創学部を開設しました。同学部では、国内外の地域を実際に訪れながら学ぶフィールドワークを重視しています。
「国内フィールドスタディ」は、地方都市や農山漁村を学びの場とし、地域で活躍する方々との対話を通じて、それぞれの地域が抱える課題や可能性について考える演習科目です。
2026年度は、軽井沢(担当教員:小室准教授)、北海道十勝(担当教員:小田教授)、富山県(担当教員:三宅専任講師)、石川県奥能登(担当教員:高橋教授)をフィールドとして実施されました。今回は、帯広市役所と本学との連携協定の枠組みの下、小田宏信教授が担当した北海道十勝・帯広での演習の様子をご紹介します。
小田教授が担当する北海道十勝演習には、国際共創学部1年生18名が参加しました。
9月7日から10日までの4日間、帯広市を拠点に十勝各地を訪問し、地域で活躍する実践者の方々からお話を伺いました。
今回のテーマは、
「十勝の循環と葛藤に触れ、問いを自分ごと化する」
です。日本有数の農業・酪農地域である十勝を舞台に、人と自然との関わりや地域資源の循環、持続可能な地域づくりについて学びました。
初日は帯広競馬場を訪問し、「とかち馬文化を守る会」の旋丸氏からお話を伺いました。
十勝では、かつて農業や林業、漁業など様々な場面で馬が活躍していました。しかし、機械化に伴いその役割は急速に失われていきました。
学生たちは、世界で唯一のばんえい競馬※を見学しながら、「馬による牽引文化」がどのように受け継がれているのかを学びました。また、馬糞をマッシュルーム栽培に活用する取り組みなど、地域における資源循環についても知る機会となりました。
※ばんえい競馬とは、大型の馬が重いそりを引き、障害物のある直線コースで力と速さを競う、北海道・帯広市で開催されている競馬。

2日目は鹿追町環境保全センター、わくっとニッタ、帯広の森を訪問しました。
鹿追町環境保全センターでは、家畜ふん尿からバイオガスを生み出し、発電や熱源の養殖・農業利用、水素製造などへとつなげる資源循環の仕組みについて学びました。
また、わくっとニッタの社長の山口氏からは森林を伐採することなくカエデの樹液を採取し、メープルシロップを生産することで森を守る「伐らない林業」について学びました。
帯広の森では、市民参加によって半世紀にわたり続けられてきた森づくりの歴史を知り、人と自然との長期的な関わりについて考えました。

3日目は広尾町や更別村を訪問し、酪農、漁業、農業の現場を見学しました。
鈴木牧場では、牧草、牛、土壌が循環するオーガニック酪農を学びました。オーガニックな牧草地が温暖化ガスを土壌に蓄える役割を持つことや牛を健康に育てるためには土壌の健全性が重要であるという考え方に、多くの学生が関心を寄せました。
保志漁業部では、昆布漁を実際に体験しながら、昆布を活用した新たな商品開発や、牛の飼料に混ぜることによるメタンガスの排出抑制に向けた取り組み、また、漁業と教育を結びつける取り組みについて学びました。
さらにバイオダイナミックファーム・トカプチでは、土壌劣化に対する危機感や土づくりを起点とした環境再生型農業について話を伺い、畑作・酪農・土壌・海洋環境・大気環境が相互につながっていることを理解しました。

最終日は、帯広市内で振り返りワークショップを実施しました。
学生たちは、それぞれが訪問先で感じた疑問や気づきを共有しながら、「なぜ環境に配慮した取り組みは広がりにくいのか」「地域独自の価値をどのように発信していくべきか」など、多様な問いについて議論しました。
発表では、「循環」を単なる環境問題としてではなく、人、自然、産業、文化が結びつく地域の仕組みとして捉える意見が多く見られました。
今回のフィールドスタディでは、地域で活躍する方々との対話を通して、教室では学ぶことのできない多くの気づきを得ることができました。
学生からは、
「本当に持続可能な地域をつくるためには、地域の文化や産業、自然環境を守る人がいて、その活動が地域の中でつながっていることが重要なのだと気づきました」
「地域の中で人が関わり合い、新しい挑戦が生まれ、その挑戦が地域の活力となり、さらに新しい人や価値を呼び込む。このような循環が地域を支えていることを学びました」
「この経験を今後の学びや将来に活かし、自分自身も地域や社会に貢献できる人になれるよう努力していきたいと思います」
といった感想が寄せられました。
国際共創学部では、今後も国内外の多様な地域を学びの場とし、現地の方々との協働を通じて、社会や地域が抱える課題に向き合う実践的な学びを展開していきます。