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成蹊大学文学部芸術文化行政コース 成果発表会「成蹊アートプロジェクト2025」を開催しました

2025年09月10日

お知らせ

7月3日~5日の3日間、文学部芸術文化行政コース第4期生の成果発表会、成蹊アートプロジェクト2025『はじまりのたび、おわりのたび -友政麻理子作品展-』が、成蹊大学11号館ラーニングコモンズ(トーリウム)で開催されました。

会場には、美術家/映像作家・友政麻理子さんの作品が展示されました。今回のタイトル『はじまりのたび、おわりのたび』の「たび」は、「旅」と「~する度に」の2つの意味を持っています。異国の地を巡るなかで描かれた繊細なドローイングに加え、現地で出会った人々との対話や交流から生まれた映像作品が、スクリーンに投影され、作品をとおして来場者一人ひとりが、今回のテーマ「たび」に思いを巡らせました。

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(写真=冨田了平)

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また関連イベントとして、来場者に"旅人"になりきって手紙を書いてもらうポストカードワークショップや、7月5日(土)には、本展の招聘作家である友政麻理子氏と本学卒業生であり、各国を旅しながら現地の人々との挨拶を交わしてきた「ヴァガボンド」のテンギョー・クラ氏を迎えてのトークイベントも開催されました。
(写真=冨田了平)


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▲トークイベントの様子 対面のほかオンラインからも参加者も(写真=冨田了平)


今回の発表について、Art Center Ongoing / Art Center NEW 代表の小川 希 氏と、芸術文化行政コース運営委員会委員長の見城武秀教授から感想をいただきました。

■ Art Center Ongoing / Art Center NEW 代表 小川 希 氏
成蹊大学文学部芸術文化行政コース第4期生成果発表会「SEIKEI ART PROJECT 2025」はじまりのたび、おわりのたび-友政麻理子作品展-を見させていただきました。この企画を作られていた学生さんから展覧会の感想がほしいと頼まれましたので、今回は、友政さんの作品自体というよりも、企画そのものについての感想を書こうかと思います。まず、一つの企画を初めから最後までやり通したこと、とても素晴らしいと思いました。関わった生徒さん一人一人が力を合わせて頑張った結果でしょう。ハンドアウトの会場マップも見やすく、解説文も一生懸命書いたことが伝わってきました。またワークショップやトークイベント、そして関わった学生さんのインタビュー映像なども準備されていて、企画の厚みも感じました。みなさん本当におつかれさまでした。で、終わりたいところですが、もっとこうしたらよかったのではと言うことも書いた方がいいのでしょうかね。うーん、みなさんのこれからのために書くとしたら、、、例えば「旅」というテーマを、友政さんの作品にお任せするのではなくて、自分たちなりに改めて深く考えてみる必要があったのではないかとかでしょうか。その上で友政さんの作品をどう見せるかを考える。みなさんにとって「旅」ってどんなものでしょうか。例えば、長く歩くことだったり、思いもよらない出会いがあったり、道に迷ってみたり、また、いつもの生活から離れて一人になることだったり、これまでのことをゆっくりと振り返ってみる機会だったり。どんなものでもいいのです。みなさんにとっての「旅」の解釈がまず第一にあって、その上で友政さんの作品をどう見せるかを考えても良かったのかなと。今回の展示では、友政さんの作品が1階、2階、3階に順番に並べてありました。見やすかったけれど、どこか普通な感じがしました。じゃあどんな他の見せ方あったのか。そうですねぇ、例えば、お客さんに成蹊大学の校内を旅してもらい、その途中で思いもよらない出会いとして、友政さんの作品があるとか。単純にモニターが会場に既にあるからとか、プロジェクターが動かせないからとか、そういったハードの理由で作品の展示方法を決めるのではなく、自分たちの思いがまずあって、それを伝える手段としてどんな見せ方の可能性があるのかを考えてみる。あとは3日間という短い展示期間だからこそできる、もっと無茶な展示の方法を考えるとかはどうでしょう。例えば、観客は生徒たちと一緒に成蹊を出発して、1日かけて街中に点在している友政さんの作品に出会いにいき、その旅の最後に友政さんが待っているとか。見やすい綺麗な展示といった、既にあるフォーマットに近づかせようとするのではなく、自分たちが考える「旅」を見せるためのオリジナルな芸術体験を友政さんの作品の力を借りて考えてみる、そんな視点があってもよかったのかなーと思いました。でも、とりあえずこれはみなさんにとっての「たび」のはじまりでもあって、これから困難にぶつかる「たび」に、悩み、考え、変化していけばいいのですよね。また面白いものを見せてください。今回は、ありがとうございました。

■ 芸術文化行政コース運営委員会委員長 見城武秀 文学部教授
芸術文化行政コース第4期生の皆さん、1年間の制作演習、本当にお疲れさまでした。成果発表会の前日、最後の準備に追われていたときの真剣な表情、そして発表会を終えた後に見せてくれた晴れやかな笑顔が、皆さんがこの授業に全力で取り組んできたことを何より雄弁に物語っていました。
『はじまりのたび、おわりのたび――友政麻理子作品展』は、皆さんの努力の集大成と呼ぶにふさわしいものでした。展示空間の構成、解説パンフレットやポスターのデザイン、トークイベントやワークショップの企画・運営のいずれからも、友政さんの作品を見ることで何かを感じ、考えてほしいという皆さんの想いが伝わってきました。そこにいたるまでには、検討されたけれども採用されなかった多くのアイデアやデザイン、さらには失敗や挫折があったことでしょう。けれども、そういった試行錯誤こそがこの作品展に奥行きと力をあたえたのだと思います。
本展のタイトル『はじまりのたび、おわりのたび』は、そうした皆さんの歩み自体を象徴しているように思えます。アーカイブ班が作ったドキュメンタリー映像や記録集は、皆さんが友政さんの作品と対話しつつ作品展をかたちにしていった過程それ自体が「旅」であり、「幾たびも繰り返されるはじまりとおわり」であったことを教えてくれます。友政さんの「たび」が皆さんを「たび」へと誘い、皆さんの「たび」が来場者一人ひとりの「たび」へとつながっていく、そんな重層的な構成を見事に表現したタイトルです。
さらに、今回の展示は会場となったラーニングコモンズという空間の新たな可能性も引き出してくれました。学習や話し合いの場としてのイメージが強いこの場所を1階から3階へと立体的に活用し、ドローイングの展示を含めた空間構成を工夫することで、展示空間としても魅力的であることを証明しました。これがきっかけとなり、ラーニングコモンズの可能性を探るさらなる試みが続くことを期待しましょう。
芸術文化行政コースは、芸術文化の実践とそれを支える運営実務の双方に通じている人を育てることを目指しています。そのカリキュラムにおいて特別な意味をもっているのが、アーティストや作品に光が当たる表舞台からは見えないところで何がおこなわれているのかを実体験する制作演習です。
制作演習という「たび」を終えた今、皆さんの記憶に残っているのはどのような光景でしょうか。「タイパ」という言葉が当たり前のように使われ、目標に最短時間で到達することがよしとされる風潮の中で、目的地もよくわからないまま歩み始めたときの不安。目的地に向かって進んでいるはずなのに見えてこないときの焦り。目的地が見えているのになかなか到達できないときのもどかしさ。そうした回り道とも思えたあれこれが、完成した作品展にとって不可欠な営みだったことを、今の皆さんなら理解できるはずです。その経験が皆さんを次なる「たび」へといざない、道中を支える糧となってくれることを願っています。
最後にもう一度、心からの拍手を送ります。お疲れさまでした。


発表に向け芸術文化行政コース4期生の15名は、キュレーション班、トークイベント班、アーカイブ班、広報班として各班に分かれ準備してきました。
▶成果発表会に向けた授業の様子はこちらよりご覧いただけます。

芸術文化行政コースは、官民における芸術文化振興の担い手を育成することを目的として開設されたコースです。行政やNPOによる芸術文化振興の実務を学ぶとともに、芸術文化を通じてさまざまな人たちが共生できる社会を考えていきます。
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