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「キャンパスVR化」ゼロからの挑戦

2017年03月10日

Interview

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見城 航 さん

(理工学部システムデザイン学科4年)


見城さんは研究室での研究と並行して、VR(バーチャルリアリティ)の技術を駆使した「キャンパスVR化」というプロジェクトを自ら起ち上げました。
欅祭(大学祭)でも注目を集めたこの取り組み、さて、どんな内容なのでしょう。


ph01.jpg見城 航 さん

ー 今日は理工学部の見城さんにお話を伺いたいと思います。

見城 現在は、VR(バーチャルリアリティ)の研究をしています。VRは日本語で言うと「仮想現実」。ゲームなどでご存知の方もいらっしゃると思いますが、専用のゴーグルを被るなどの方法で、あたかも本物の世界を体験しているようにする技術です。 どんな研究か具体的に言いますと、VRを使ったテニスのe-learningシステムの開発に取り組んでいます。e-learningとはインターネットによる学習システムのこと。従来のようにレッスンビデオなどをただ見るのではなく、「自分に向かってきたボールを打ち返す」といった疑似体験を、VR技術で再現することを目指しています。テニスは私の趣味でもあるんですが、テニスを習おうとすると広いコートが必要ですよね。そして高いお金を払ってテニススクールに通っても、生徒の人数が多くてあまり打てなかった、なんてこともある。だったらテクノロジーの力を使って、初心者が自宅などでトレーニングできる仕組みを作れないか、と思ったんです。 昨年の内におおよそのシステムを開発し、さらにスローモーションのボールを打つことによって学習効果を向上させる方法を考え、検証実験を行いました。

成蹊の美しい景観を、最新テクノロジーで「体感」してほしい。

ー 見城さんは研究室での研究とは別に、「キャンパスVR化」というものに取り組んでいると伺っています。これはどういったものなんですか。

見城 成蹊大学のキャンパスは建物にしても自然にしても、景観がすごくきれいです。その魅力をVR化して世界中に発信していこうという企画です。
私はもともとチームで何かを作り上げるのが好きで、研究室のメンバーと欅祭(大学祭)に向けて何か面白いもの、自分たちにしかできないものを作ろうと思ったのが、このプロジェクトのきっかけです。昨年の秋の欅祭では、成蹊のシンボルのひとつである情報図書館の内部をVR化してお客様に体験してもらえるようにしました。現在はキャンパスの主要な場所のほとんどをVR化しています。

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ー プロジェクトチームの中で見城さんはどんな役割だったんですか。

見城 メンバーは同じ研究室の中の7名。私は言い出しっぺなんで、リーダーとなって方針を立てたり、仕事の手順を決めたりしました。とは言っても、私はリーダーが言ったことをそのままやるだけのチームは嫌なので、ミーティングの場をよく設けてみんなの意見を聞き、その上で全員が納得して決めるようにマネジメントしていました。

万全の準備をして臨み、さらに一段上にチャレンジしていく。

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専用のカメラでキャンパス各所を撮影

ー プロジェクトを進める中で何か苦労されたことはありますか。

見城 このプロジェクトを思いたったのは4年生になる前の春休み。その時点では、実はVRの詳しい技術のことはほとんど知らなかったんです。制作方法や公開の仕方などをひたすら調べることから始まりましたね。
それから、欅祭への出展に応募する際にもちょっと苦労しました。VRに関する前例がまったくない状態だったので、自分たちがやりたいことを周りの人に伝えるのがものすごく難しくて。
撮影もなかなか大変でした。時間も限られ常にチャンスが一度きりという状態だったので、あらかじめ絶対に失敗しない手段を準備するようにしました。特にカメラなどの設置方法や動画構成は何十通りも考えておきましたね。見る人が仮想現実の中を歩いているような効果を出すために、掃除機ロボットにカメラを設置し、動かしながら撮影する工夫もしました。ひとつひとつの作業に最低限の到達目標を設定し、まずはそこをキープしておく。その上で、さらに面白そうな撮影など、もう一段上のことにチャレンジしていきました。

ph05.jpg欅祭(大学祭)でのVR体験の様子

ー 形になるまでかなり大変だったんですね。
  欅祭でお披露目した時には、お客様の反応はいかがでしたか。

見城 私としては、新しい物が好きな若い人たちに興味を持ってもらえれば、と思っていたんです。でも蓋を開けてみると高齢のお客様も結構来てくださいました。VR体験したら「すごい、すごい!」という言葉しか出てこないくらい、とても感動してくれて...。子供たちも「今、図書館の中にいるよ!」なんて言って、親子ですごく興奮していました。若者以外にも受け入れられたことは驚きでしたし、たくさんの方々に楽しい思い出を作ってもらえたようでうれしかったです。

プロジェクト成功の秘訣は、最初にプロトタイプを作ること。

ー プロジェクトを通しての学び、あるいは自分が成長したと感じるところは何かありますか。

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見城 プロジェクトの進め方において、プロトタイプを作ることの重要性を痛感しました。完璧でなくてもいいからまずは形を作る。それを体感してもらうことで、チーム内でも、周りの方とも、やろうとしていることのイメージを共有できる。企画の趣旨を伝えるのにも役立ちますし、そのプロトタイプを起点にして新たなアイディアをいただけるようにもなります。具体的に言うと「掃除機ロボットにカメラを載せて、動かして撮影してみよう」「学長やピーチくん(成蹊学園のキャラクター)を登場させたら面白そう」「図書館だけでなくキャンパス全体をVR化しよう」など、制作アイディアがどんどん膨らむとともに、最初の段階では思いもよらない程にプロジェクトが大きくなっていくのを感じました。

また、これは成長と言えるのか分かりませんが、このプロジェクトを通じて自分のしたいことが見えてきた気がします。これまでは、大学から大学院に行き、そこで一つの技術を究めて学会で評価を得る、といったことが理系に身を置く私の道かなと思っていました。今の気持ちはちょっと変わって、最新の技術を使って何か課題を解決したり、人を感動させたりしたい、そのためにゼロから企画を作り、責任を持ってやり遂げる人になりたい、と思うようになりました。今回それに近い体験をして喜びを感じましたし、今後もこういうことをやれたら幸せだと思います。

ー 将来に影響を与えるような体験だったんですね。話は変わりますが、成蹊大学の好きなところや魅力についてお聞かせください。

見城 成蹊大学のいちばんの魅力は、心が落ち着く環境だと思います。感じ方は様々かもしれませんが、高いビルが立ち並ぶようなキャンパスだと圧迫感を感じ、どうしても心が窮屈になる。その点、成蹊大学はゆったりとしていて緑に溢れ、人の心を開いてくれるような気がします。それが心の余裕へとつながり、そして、他の人の異なる価値観に目を向けることにもつながっていく。しかもワンキャンパスだから、他の学部の学生と交流がしやすく、様々な気づきをもらえる。社会問題などを幅広い視野で考える、そんな思考の仕方を自然と育んでくれるように思います。現に今回のプロジェクトも、「成蹊にしかできないこと・自分たちにしかできないこと・大学祭に来るお客様が求めていること・今の技術にできること」など、様々な視点から考え、見つけ出した答えなんです。

技術で人を幸せに。そんな企画を生み出す仕事がしたい。

ー 最後になりますが、これからの夢や目標を教えてください。

見城 どんなにすごい技術が生まれたとしても、それを使って製品にする際に「人」を忘れてはいけないと思います。こんな技術ができた、じゃあこの技術を誰に向けて、どんな形で届けたら喜んでもらえるだろう、どんな風に発信すれば広く関心を持ってもらえるだろう、と深く考えることがいちばん重要なんじゃないかって、今回の活動を通じてますます強く思いました。非常に当たり前のことではあるんですけれど、技術先行ではなく、ユーザーの気持ちに応えること。新しい技術、埋もれていた技術で人を喜ばせ、感動させ、幸せにすること。先ほども少し言いましたが、テクノロジーをベースに「人」を第一に考える企画の仕事に携わりたい、今はそのように思っています。

ー 将来、ワクワクするような企画が生まれてくるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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  • このコンテンツはYOMIURI ONLINEに公開された内容を再編集したものです。コンテンツ内容や、学生の在籍学部学科名、在籍年次、教員の役職等の情報は2016年度公開時のものとなります。