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理工学部 戸谷希一郎教授らの論文が米国科学誌『ACS Chemical Biology』に掲載され、併せて 掲載号の"Supplementary Cover"に採択されました

2025年11月25日

教育・研究

理工学部 戸谷希一郎教授(専門分野:生物有機化学、糖鎖生物学)のグループの「化学プローブアプローチによって解明されたEndo-α-mannosidase によるカルネキシン/カルレティキュリンサイクルにおけるミスフォールド糖タンパク質のトリアージ (Chemical Probe Approach Reveals Endo-α-mannosidase Triages Misfolded Glycoproteins in the Calnexin/Calreticulin Cycle)」と題された学術論文が、米国科学誌『ACS Chemical Biology』に掲載され、併せて掲載号の "Supplementary Cover" に採択されました。
米国科学誌『ACS Chemical Biology』への掲載ページはこちら

『ACS Chemical Biology』は、アメリカ化学会が刊行する化学と生物学の境界領域研究に関する国際学術専門誌で、生化学分野のTop 25%にランクされるQ1ジャーナルです。

 戸谷教授のグループは、長年、様々な疾患の発症と関係する、糖タンパク質品質管理機構の解明に取り組んできました。糖タンパク質の「フォールディング促進」と「フォールディング状態のチェック」を司るカルネキシン/カルレティキュリンサイクルは、本品質管理機構の中心として重要な働きをしています。しかしながら、このサイクルから不良品糖タンパク質をトリアージして離脱させる仕組みは、ミッシングリンクとして残された未解明課題でありました。
 今回の論文では、独自設計の特殊な化学ツールを駆使して、カルネキシン/カルレティキュリンサイクルから不良品糖タンパク質を離脱させる駆動力となる、新たな酵素を発見し、ER-endomannosidase (ER-EM) と名付けました。この発見は、前述のミッシングリンクを繋ぐ学術的価値の高い成果です。また、この酵素が不良品糖タンパク質に対して選択的に働く基質特異性を明らかにするとともに、本酵素が不良品タンパク質部分の結合によって活性化するアロステリック制御型の酵素であることも解明しました。さらに、本酵素がCes1d、UGGT1、およびERp57 という三種のタンパク質からなる複合体として機能することも突き止めました。
 生体内におけるER-EMの働きは、不良品糖タンパク質の仕分けと分解に重要であり、不良品糖タンパク質の蓄積によって引き起こされる糖尿病やアルツハイマー病、パーキンソン病などの疾患発症と関係しているため、これらの疾患に対する新たな治療標的としての活用が期待されています。

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戸谷教授の研究について


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