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INDEX vol.95

01

Special Interview 蹊を成す人

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ
プリビジュアルディベロップメント・アーティスト
鈴木 松根

09

新学園長・新学長ごあいさつ

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13

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18

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19

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23

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24

成蹊オリジナルグッズ

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25

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ピーチくんのおともだちコンテスト
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お知らせ/編集後記

27

100年前からのメッセージ

―成蹊教育のDNA―
「建学の日」

INTERVIEW インタビュー記事

「好き」が、最高の原動力。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで、“アナと雪の女王”をはじめ世界的な大ヒット作を数々手がけられている鈴木松根氏。
好きなことを追い続ける喜びや大切さが、
ひとつひとつの言葉から強く伝わってきました。

<これまで携わった映画作品>
『ズートピア』 『ベイマックス』 『アナと雪の女王』
『シュガーラッシュ』 『塔の上のラプンツェル』 『アバター』
『ラブリーボーン』 『地球が静止する日』
『ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛』
『ジャンパー』 『魔法にかけられて』 『30デイズ・ナイト』
『ファンタスティック・フォー2:銀河の危機』 『ルイスと未来泥棒』 『チキンリトル』 他多数

1959年生まれ。成蹊中学・高等学校を経て、成蹊大学法学部法律学科卒業。国内デザイン会社を経て86年に渡米し、“名門 Art Center College of Design”(パサディナ ロサンゼルス)で工業デザインを学ぶ。在学中のルーカスフィルムでのインターンの経験から、卒業後はハリウッドの映画スタジオで特殊効果を手がけ、後にアートディレクターとなる。95年、特殊ビジュアル効果部門でエミー賞受賞。97年、ディズニーと専属契約。『塔の上のラプンツェル』では、プリビジュアライゼーションという最先端の技術を駆使し、映画のヒットに貢献。その後、『アナと雪の女王』『ベイマックス』『ズートピア』など数々のヒット作を手がける。また、20世紀フォックスの超大作『アバター』をはじめ、パラマウント、コロンビア等の制作会社の映画作品にも携わる。

好きな仕事だから、忙しくなるほどうれしくなります。

鈴木さんがこれまで携わってきた作品は、“アナと雪の女王” “ベイマックス” “塔の上のラプンツェル” “アバター”、最近ですと“ズートピア”など、大人気の作品ばかりです。まずは、プリビジュアルディベロップメント・アーティストとはどのようなお仕事か、簡単に教えていただけますでしょうか?

映画を作る比較的新しい手法に「プリビズ」というものがあります。昔ながらのアニメーションでは、台本をもらったら、まずマンガのように1枚ずつ絵を描いてストーリーボードにし、皆でそれを見ながら、こんなセットが必要だ、キャラクターはこれだけ必要だ、などと話し合うんです。それから、一旦それぞれの部署に持ち帰って案を練り、できあがったものを持ち寄って、各部門がある程度高いレベルになったら、ようやく撮影となる。一方、プリビズとは制作の早い段階にCG(コンピュータ・グラフィックス)で簡単なセットや音を作り、ラフな映画を作ってしまう手法です。これによって必要な時間の尺、必要なセット、キャラクターの動きのタイミングなど、あらゆることが分かる。また、本格的な制作に入る前にさまざまな試みができるので、斬新な表現の挑戦ができるんです。
このプリビズを作るのが私の仕事ですが、この時点でいかに冒険的な失敗をしていい映画を作るか。それが最終的にできあがる作品の背骨の部分になるので、非常にやりがいのある仕事です。

鈴木さんは中学から成蹊に進まれ、大学は法学部をご卒業されています。
どのような経緯で今のお仕事につかれたのですか?

中学に入り、成蹊小学校からあがってきた生徒達と一緒になって驚いたことがあるんです。みんなストレートで、自分をしっかり持っている。そんな同級生達が私には凄く新鮮で刺激を受けた。それで周りの子が楽しそうにやっていることは何でもやってやろうと思ったんです。鉄道模型、モデルガン、自転車の製作、サイクリング、オーディオ…。趣味という趣味はすべてやり尽くした感じです。中でも物を創作することが大好きで、大学では日本学生模型協会の会長を務めました。卒業後デザイン系の会社に入りましたが、工業デザインを勉強したくて26歳の時にアメリカのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインへ入学。その在学中に、私の姉が勤めていたルーカスフィルムへインターンシップに行ったんです。そこで映画の世界にすっかり魅せられてしまい、卒業後、ハリウッドのSFXスタジオに入社しました。
その後、フリーランスを経て、ディズニーの引き抜きを受け、現在に至ります。最初は実写映画のスペシャル・エフェクト(特撮)を専門にして働いていましたが、後にアニメーションの世界へと入っていきました。

のびのびとした校風が、今の私をつくってくれた。

成蹊にいらしたのは久しぶりだそうですね。
甦ってくる思い出はありますか?

中高6年間、欅並木を通って学校まで通ったのでとても懐かしい。遅刻寸前でカバンを抱えて全力疾走したことを思い出しますね(笑)。
美術が大好きだったので、特に美術の先生のことが思い出されます。中学校の入学試験で面接してくださったのが美術の佐藤先生。「成蹊中学校で何がやりたいか」と聞かれました。ちょうどその年は火星が地球に大接近していたので、「成蹊の天文ドームで火星を観察したい」と答えたんです。後日、先生からその受け答えが気に入ったと伺い、いやぁ成蹊って面白い学校だなと思いましたね。それから、美術の読見山先生。授業が待ちきれなくて、休み時間から友人と一緒に教室前の廊下に座り込み、絵を描きながら待っていたんです。その姿を先生がご覧になり、とても喜んでくださった。他の教科の成績はふるわず、まずいなと思っていたのですが、美術はすごくいい点をいただき、それで進級できたようなものです(笑)。

成蹊での学びが今のお仕事に影響しているところはありますか?

成蹊は生徒がやりたいことに寛容だったとつくづく思います。個性を尊重する校風の中で、やりたいと思ったことを自由にのびのびとやらせてくれた。その時に幅広い知識を蓄えることができたので、仕事でこんなセットを作ってくれと言われた時、イメージを広げて作ることができる。発想の引き出しをたくさん持てたことが、今の仕事に100%役に立っています。そして、成蹊は自由でありながら、学ぶべきこと、やるべきことはきちんとおさえる。そうした人格教育のおかげで、発想は自由にしながらも、責任を持ってしっかり仕事をするという姿勢が養えたと思います。それは、どんな仕事であっても信頼のベースとなるものではないでしょうか。ディズニーという会社は伝統を重んじる紳士的な会社。方法論が決まっていて、その中で新しいものを創造していこうというスタイルなんです。伝統と自由、まさに成蹊とつながる部分を感じますし、成蹊で育った私はディズニーの社風ととても相性がいいように思います。

鈴木さんにとって、仕事をする原動力、壁を乗り越えていく力となるものは何でしょう。

好きであること。これに尽きると思います。好きで、やりたいことをやっている。だから、どんなに仕事が増えきつくなってきても、楽しくてしょうがない。もっともっと仕事を、とエキサイトします。
そして、これは私のポリシーでもあるのですが、作る時に絶対に妥協しないこと。数字では測れない仕事なので、自分の中のクオリティの尺度を絶対に落とさない。どんなにきつくても、とことんやると決めています。街中で「あの映画、感動したよ」なんて声を掛けられるたびに、がんばってよかったとうれしくなります。
もちろん、壁にぶつかることもありますよ。解決策がなかなか見つからず、眠りながら夢で考えていることもあります。でも、その壁を溶かし解決することも楽しいチャレンジ。今までに誰もやっていないアイデアを生み出すチャンスでもあるんです。ハリウッドでは数年前に、フィルムからデジタルへの移行という大きな変換期がありました。
この技術革新に折れてしまったクリエイターは多く、僕の友人もたくさん別の職業へ移ってしまった。好きなものやこれまでのものにとらわれるのではなく、いろんなもの、新しいものを、「面白そう」と好奇心を持って学んでいくことも大切でしょうね。

最近手がけられた作品に関して、何かお話を伺えますか。

“ベイマックス”ではサンフランソウキョウという街が舞台になっています。その街にあるたくさんの看板の中に、「鈴木○○」「松根○○」など、いくつか私の名前を潜ませました(笑)。機会があったら探してみてください。今春公開された“ズートピア”は、動物たちが人間のように暮らす“楽園”を舞台にした物語です。楽しい友情、冒険物語の下に社会問題も織り込んでいて、大人の方にも観ごたえのある多層的なストーリーづくりをしています。また、本物にこだわった表現にも注目です。従来の動物もののアニメーションは、象の大きさはだいたいこれ位、アリはこれ位と、スケールをごまかしています。“ズートピア”では、なるべく実際に近づけようと、大きさの比率はもちろん、骨格や動きまで忠実に作りました。今までにないチャレンジでかなり新鮮なルックスになっていると思います。次作は日本では2017年に公開予定です。まだあまり明かせませんが(笑)、タイトルは“モアナ(原題)”。南の島に住んでいる女の子と神様のお話しになります。

最後に、成蹊の後輩たちにメッセージをいただけますでしょうか。

渡米しようとした当時、私は英語を話すこともできなかったのですが、好きなことをしたい一心だったんですね。「あの時ああしておけば…」と後悔しながら死んでいくのは自分がかわいそうだと思ったので、とりあえずやりたいことはやろうと。ダメだったらもうしょうがない。でも、やらないであきらめるのはどうしても許せなかった。「後悔しないように」「一度の人生、面白い道を選ぼう」というのが、常に自分の芯としてあります。皆さんも好きな道を見つけたら、安易にあきらめないでください。あきらめた時がその人のリミットじゃないですか。ギリギリまで自分をプッシュしてください。
皆さんは成蹊という素晴らしい学校にいるんだから、可能性はめちゃくちゃある。押せる所まで押していけば必ずいいことがあるってことを、信じてもらいたいと思いますね。