Highlights

Highlights

花が長持ちし、土壌微生物も活性化? プラズマの可能性を学生たちが検証

2026年08月20日

PICK UP!


植物に。土に。水に。

プラズマを使うと、何が起きるのでしょうか。 理工学部の連携プロジェクト「テーマⅡ」では、異なる分野を学ぶ学生たちがチームを組み、植物や土壌微生物への影響を探究しました。 大学院生の協力も得ながら、実験、観察、分析を繰り返した1年間。
土壌細菌の活性化や、プラズマ処理水による花の延命など、興味深い結果が見えてきました。

2026年7月に実施された連携プロジェクト全体の成果報告会の内容からご紹介します。


⚡プラズマの可能性を探る

このプロジェクトは、昨年度後期に行われた「キノコの成長促進」に関する研究を発展させたものです。今年度前期は、

「土壌微生物」「花(プラズマ処理水)」

に着目し、プラズマが生物や生育環境に与える影響を探りました。

学生たちはテーマ設定から実験計画まで主体的に検討し、現実的に実施可能なテーマを選びながら研究を進めていきました。

⚡土壌細菌は活性化するのか

土の中には、植物の生育を支える多くの微生物が存在しています。 学生たちは、プラズマ照射が土壌細菌にどのような影響を与えるのかを調査しました。

これは、土壌細菌がデンプンをどの程度分解するか、実験したものです。

左から「土なし、プラズマなし」「土あり、プラズマなし」「土あり、プラズマあり」
右に行くほどヨウ素液によってデンプンが染色されていないことが分かる。

実験の結果、プラズマによる刺激によって土壌細菌の活動が活発になり、酵素の分泌量が増加、デンプンを分解した可能性について考察しています。もし土壌微生物の働きを高められるなら、植物の成長を支える新しいアプローチにつながるかもしれません。

この成果の中で興味深かった点について、担当教員の村上朝之教授(理工学部)は、

土壌細菌の活性化ですね、驚きました。あまりに面白いので、追加実験を計画しています。うちの研究室の研究テーマ Space Agriculture(宇宙農業)の柱になるかもしれません。

と評価しています。

⚡花は本当に長持ちするのか

学生の発表資料より

もう一つのテーマは、花の鮮度維持です。

学生たちは、精製水にプラズマを照射した「プラズマ処理水」を用いて、アジサイやバラの鮮度や状態の変化を比較しました。その結果、通常の条件よりもプラズマ処理水を用いた花の方が、長く状態を維持する傾向が確認されました。

学生たちはその理由として、

    • プラズマ処理によって生成された窒素化合物が肥料のような役割を果たした可能性
    • 過酸化水素が酸素供給や殺菌作用に寄与した可能性

を挙げています。普段は目に見えないプラズマの作用が、花の状態の違いという形で現れたことは、学生たちにとっても大きな発見となりました。

精製水とプラズマ処理水での花の鮮度比較。右のアジサイがプラズマ処理水を使用。

精製水とプラズマ処理水での花の鮮度比較。左から「精製水」「精製水」「4分プラズマを照射した精製水」「20分プラズマを照射した精製水」

⚡成功だけではない。数多くの試行錯誤

発表で紹介された実験の裏側には、成果に結びつかなかった挑戦もありました。例えば、飲料にプラズマを照射し、味の変化を調べる実験です。

学生によると、コーヒーにプラズマを照射すると、味が薄く、美味しさを損なったように感じられたそうです。

しかし、今回は味覚評価が中心となり、定量的な分析まで行う時間を確保できませんでした。興味深い結果ではあったものの、十分なデータとしてまとめることができず、発表テーマとしては見送ることになりました。

それでも、「まずやってみる」「結果を見る」「なぜそうなったのか考える」という積み重ねこそが、研究の醍醐味です。

⚡異なる分野の学生が協力する

このテーマには、コンピュータ科学専攻、電気電子専攻、応用化学専攻と、異なる分野を学ぶ学生たちが参加しました。ある学生は、

いろいろな分野の専門知識を見ることができて、とても良い機会だった

みんなでいろいろなことを持ち寄って考えられるところが良かった

と振り返ります。プラズマという共通のテーマを軸に、多様な知識や視点が交わることで、一人では辿り着けない発見やアイデアが生まれていきました。

大学院生もサポートとして加わり、専門や学年を超えた学びの場となったことも、連携プロジェクトの特徴です。

村上教授も以下のように語ります。

それぞれの"違う得意"から生まれた"違う発想"のクロスポイントからは、面白いものが生まれてきますね。学生達自身もそれを感じているように思います。

⚡研究室へつながる1年間

2年後期から3年前期まで続くこの連携プロジェクトは、学生たちにとって研究の入口でもあります。

実験を計画し、データを集め、結果を分析し、考察する。

その一連のプロセスを自ら経験したことは、今後の学びの大きな土台となりました。

村上教授
連携PJでは自分たちで動かないと何も出来ません。正解が用意してあるわけでもありません。これから取り組む『研究』というのは、そういうものです。二言目には『これで大丈夫ですか?』と他人を頼る学生が多い中、連携で鍛えられた経験は貴重だと思いますよ。

学生たちはこの秋から、それぞれの研究室へと進みます。今回のプロジェクトで培った問題発見力や探究心、そして異なる専門分野の仲間と協働した経験を活かしながら、自らの専門をさらに深めていきます。


前の記事 次の記事