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「黄色は裏切りの色だった?」「伝統と多様性は共存できる?」 ― 学生たちの卒業研究(文学部国際文化学科)Vol.1 ―

2026年02月26日

PICK UP!

黄色はかつて"裏切りの色"だった?
― 歴史を旅する「黄色」の物語 ―


私たちが何気なく見ている「黄色」という色。
明るい、元気、あたたかい──そんなポジティブな印象がある一方で、注意・警戒を示す色でもあります。その歴史をたどると、黄色は社会の価値観や文化の変化を映す"鏡"のような色であることが見えてきます。

今回は、色彩の表象史に興味を持った学生の卒業研究をご紹介します。


●研究の内容

☀最古の色のひとつ、黄色
― 太陽と豊穣のシンボル

黄色は先史時代から使われていた、もっとも古い色彩の一つです。ラスコー洞窟には約1万7千年以上前の黄色い馬の壁画が残され、古代エジプトやローマでも太陽・富・神聖性を表す色として用いられてきました。

宗教画でも多くの太陽神が黄色の衣や光輪とともに描かれ、"生命と光"の色として親しまれていました。

ゼミ合宿で大阪万博へ。研究に関連するイスラエルパビリオンを見学した。

☀中世で"意味が反転"
──黄色はなぜ裏切りの色に?

この研究で使用した参考文献の一部

中世に入ると黄色のイメージは一変します。その象徴が、ジョット(Giotto)による『キリストの捕縛(ユダの接吻)』。この作品では、裏切り者ユダが黄色(イエロー・オーカー)の衣をまとって描かれています。

この表現は後の画家たちにも継承され、識字率の低かった時代に「色で役割を伝える」という視覚的コミュニケーションとして機能しました。

こうして黄色は、
「光の色」 → 「裏切りの色」
へと意味を変えていったのです。

☀権力・社会・差別と結びついた"黄色"

普段のゼミでの様子

アメリカ大陸が発見された大航海時代以降、ヨーロッパでは異文化接触が増え、人々を外見で分類する思想が強まります。その中で過去の西洋人がつくり上げたのが、「アジア人=黄色」という人種分類です。

しかしこれは、「科学的根拠のない18~19世紀の人種体系」「当時の植民地主義的世界観」によって作られた社会的概念であることが、現在の研究で明らかにされています。

さらに20世紀には、ナチス・ドイツがユダヤ人のシンボルとして黄色のダビデの星を定め、黄色は差別を可視化する記号として悪用されました。 つまり、黄色は単なる色ではなく、 "権力者が他者を区別するために利用されることもあった" という側面を持つのです。

☀現代の黄色
─ 光・創造性を象徴する色へ再び

近代以降、黄色は広告・アート・デザインの分野で「生命力」「創造性」「自由」を象徴する色として存在感を取り戻しています。 可視性が高く、人目を惹く色として積極的に利用される一方、歴史に刻まれた差別の記憶を呼び起こす感受性の高い色でもあります。

黄色は、時代の価値観や人々の感情を反映しながら変化する、多義的で奥深い色なのです。


●研究のきっかけ

卒論テーマに出会うきっかけとなった授業の資料

きっかけは授業で聞いた、
「黄色はユダヤ人の表象として使われてきた」
という一言。

宗教画でも黄色は肯定的な象徴だけでなく、複雑でネガティブな側面があることを知り、黄色って人々にとってどんな意味があるのだろう?と興味が湧いたのが出発点でした。


●研究を終えて

色というテーマは奥が深く壮大でした。研究を進めるうえで大変なことも多かったですが、宗教や人種という観点から色という身近なもののの歴史、意味を見出していくことは楽しかったです。――学生はそう語ります。

黄色という身近な色を通じて見えてくるのは、 人間社会の多様性、変化、そして偏見と向き合う必要性。 色を学ぶことは、私たちの価値観を見つめなおし、人々の平等や相互理解に向き合うことにつながるのです。


卒業論文タイトル
「黄色の表象の歴史的変遷――芸術・宗教・人種――」

著者:小泉夕夏(文学部国際文化学科4年)
所属:寺本ゼミ


指導教員である寺本敬子准教授は、2026年度からは国際共創学部の所属となります。

国際文化学科の卒業論文報告会について

国際文化学科では毎年、各ゼミから代表者が研究成果を発表する「卒業論文報告会」を開催しています。 本記事では、2025年度の報告会から2名の研究をピックアップし掲載しています。

vol.2「伝統と多様性は共存できる?」は近日公開予定


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